庵野 秀明 / シン・ゴジラ
観ておいて損はない「記号」映画 / 大人の娯楽映画

記号としての「ゴジラ」と、デフォルメされたVS「日本政府」
知らないと(仕事で)話についていけない、ということがあった。それくらい一時期「記号」として機能していたように思います。
まず、日本の怪獣ドラマというジャンルの金字塔としてのゴジラを、VS 徹底的にデフォルメされた「現代日本(政府)」という形で「描ききった」点、いろいろな場所で評価されている通り。
ゴジラは伝統どおり「(日本の)人間が良くない行いをした結果」という記号として機能していて、本筋は街を破壊する怪獣を倒すという勧善懲悪なのに一種の後ろめたさがある。
これが日本の怪獣ドラマの味よね。
そして、VS「現代日本(政府)」としたところが今回の肝です。
子供向けの戦隊モノは、「政府公認の特殊部隊お抱えの、特殊能力を持ったヒーロー戦隊」という設定であることが非常に多いけれど、(ここに、「ヒーローは一般人がなるもの」であるアメリカンヒーローものとの大きな違いがあるのだがそれはさておき。)本作は日本政府が、日本政府として、どうやって怪獣に向き合うのかという大人向けの設定です。
新兵器とか変身ベルトとかいう「あり得なさそうなもの」は出てこず、徹底して「現代日本が戦うとしたら」という視点。
「自衛隊がどこまで動くのか」「どこまで動かすことができるのか」といった、自衛隊の立場やあり方を問う、思った以上にリアリティのある内容から、
「意思決定の難しさ」「専門家の意見の判断」「立場や力関係による制限」など、組織で働く大人なら誰しも一度は悩んだことのあるテーマがたくさん出てきます。
そういえば、現実にはかなりありがち、というか一大勢力であると思われる「責任逃れ」と取れる人間はほとんど出てこなかったな。
その点は非現実的とも言える反面、登場人物たちが皆何かしら本気で日本を救おうとしているという内容は観ていて気持ちよかったです。
そしてその中で、精鋭チームを組んで独自の問題解決をしようとするのが主人公。
それも、ちゃんと組織内で機能するように立ち回るわけです。結果を出すには、パージされてしまったら意味がないわけですから。
「チームワーク」を描くお手本
最終的に、すったもんだがありつつも、ギリギリの局面で主人公達のチームのおかげでゴジラを「倒す」ことに成功。王道の「チームワーク」をうまく描いていて、これが一部の大人に娯楽としてウケている理由の一つだと思います。
このチーム、お約束どおり「専門家なんだけど、変人すぎてアウトサイダーな人たち」が結果的に集まった形ではじまります。当然、「こんなやつらが集まったってうまくいくはずないだろ・・・」という雰囲気。
それが、問題に向き合ううち、段々とそれぞれが力を発揮しはじめ、そして「日本を救いたい」という共通の目的に向かって、それぞれの能力がだんだん一つの解決策へ向かっていく。
中盤、時間との戦いになって、みんなが徹夜でシャワーも浴びずご飯も食べず、ひたすら頑張る、みたいな場面が出てきます。
「○○さん、シャワーくらい浴びてきたらどうですか。少し休まないと」
「う~ん。そういう△△さんこそ、家に帰らなくて大丈夫なのかい」
「自分だけ休んでるわけにはいきませんから」
→ 二人でにっこり、みたいな感じのやり取り。
今が踏ん張りどころ、というところで「日本のために皆が身を削って頑張る」「そんな人たちが愛おしい」みたいな描写なので、こう、いい意味でグッとする反面、「悪い意味でも日本らしさがちゃんと描写されてるな・・・」という気分にも。
まあ本当に日本(というか自分)が生きるか死ぬかという場面の描写なので、それくらい頑張るのが自然なのかもしれないですがね。
アメリカ映画だったら、同じように徹夜で時間との戦いで頑張ったとしても、こういう表現はしないんじゃないかなぁという印象です。
私もそうだけど、「皆で頑張って一丸となる感じ」、好きよね、みんな。
閑話休題。
最終的にはそのチームが直接的な問題解決を成し遂げます。
「それぞれのプロが、一つの問題に向かって力を発揮し、結果的に素晴らしい結果をもたらす」というチームワークが最後まできれいに描かれていてスカッとするかと。
そしてスパイスとなっているのが「石原さとみ」。
日本国内だけでなく、海外ともいろいろな思惑やネゴシエーションがある、というリアリティと、「組織内部の仲間ではないが、志は同じで、別の場所からアプローチする同志」というポジション。
(発音が話題になりましたが個人的にはそんなもんはキャラ立ちの一種、くらいに感じました。)
峰不二子的な感じでしょうか。
色気のないキャストの中での華の役割もあってバランスよし。
王道チームワーク、を、日本の伝統的な記号(ゴジラ)や、現代日本(政府)と絡めて描いたのは上手いなと思います。
小ネタの宝庫
色々と小ネタが散らばっていて、それもヒットを生み出した理由の一つといえそうです。「石原さとみの発音」もそうですし、「蒲田くん」なんかはtwitterでイラストを見かけて釣られましたし、「ヤシオリ作戦」、「無人在来線爆弾」、「ゴジラの尻尾」、「作業部屋に持ち込まれた機器の現実性」、etc
それぞれ小ネタとして優秀で、それを他の人と話すだけでも楽しい。
世界観が徹底・一貫しているとこういうのが光ってくるよね。さすが庵野さん。
なにかこう・・・心に残る、引っ掛かりを残す名作、、、という感じはあまりしませんが、さすがヒット作、という感じです。
単純に娯楽映画として楽しいですし、一度は観ておいて損はないと思います。
















