スティーヴン・バクスター[古沢 嘉通 訳] / プランク・ゼロ
◆1作品ごとに更新中◆ 最終更新:2015-05-13 8/12作品バクスター2冊め!
バクスターさんは「スティーヴン・バクスター[中原 尚哉 訳] / タイム・シップ THE TIME SHIPS“>タイム・シップ」で、その文章力を知っていますので期待です。
12作品からなる(!)短篇集ですが、同じ世界観を共有していて時系列になっているオムニバス形式になってます。
「マイケル・プール」なる人物がワームホールによる太陽系への進出を実現させる、、ことから人類の宇宙進出を描いていく。
とはいえ短篇集なので、いつもどおりタイトルごとに書いていきます。
すっごい記事長くなりそうw
太陽人
「スカルプター」と表現される知性との出会い。人類がコンタクトする際に意図せず相手側の不利益になることをしてしまっている可能性がある、ってのはファースト・コンタクトネタでは常にありうる懸念の1つだよね。
この作品は珍しくそこだけを描いた作品だと思う。
人類側に脅威を感じるパターンが多いような気がするけど、この作品は逆パターン。
「スカルプター」が知性を保持できる期間が短いのと、こちらに対してなにかアクションを起こす手段がないことから脅威は全く感じないので、「スカルプター」大丈夫か…!??というドキドキですw
オチは後味悪くありません^^
論理プール
うぇ~~い。「人類自身がつくったものに反逆される・裏切られる」系作品! これもハードSF鉄板ネタですね! 舞台は海王星です。
そういう括りでいえば、これまで読んだ中だと、イーガンの「クリスタルの夜」と同じですかね。
このジャンルは「作った本人」VS「作られた知性」で展開する作品が多いのでは?と思うけど、
これはすでに「作った本人」が死んでいて、他人が調査に乗り込んでくるところから始まるので、比較的ミステリ要素が強いです。
タイム・シップを読んだ時に思ったけど、バクスターはキャラ配置が上手い。
この作品も短いけど3名登場して、それが結構またバランス良いのです。
男性上司 + ちょっとソリが合わない二人の女性(研究気質の女性&元警察の女性) これがちゃんと「物語」にしてます。
さすがだなぁ。
オチは、、、ああ(;ω;)
グース・サマー
冥王星とその月(ルナ)であるカロンに、予定外の状況で降り立ってしまった二人の女性、コーヴとリヴォフ。この作品は、この壮大な叙事詩作品の世界観を上手く説明するための一遍だなーという感じがしました。
それにしてもリヴォフが変わりすぎ!
ただ一面の氷の世界だと思っていたところに、生命体がいるとわかった瞬間からリヴォフが急変……
まさかの「この惑星のためなら命を捨ててもいい」とか言い出す!
オチのその後が気になる作品です。二人と冥王星の。
黄金の繊毛
水星での知性との出会い。グース・サマーが冥王星だったからなのか、太陽系内部で比較すれば地球に近い方じゃん、と何となく親近感(安心感)が沸くのですが、いやまだ実際の人類は月に再訪すらしてないからね……、と言い聞かせて読み進める。笑
実際に「ありそう」な表現で宇宙進出が次々に描かれていくので、これ読み続けてると感覚がおかしくなりますね!笑
これは物語性はかなり薄かったですが、「50億年前の星間旅行者」の存在にぶち当たる重要な一遍。
そういえばこれまでの4作品全て「人類サイド」と「人類が出会う生命サイド」のサンドイッチで進んでます。
いきなり人類と同じプロトコルでコミュニケーション取れる(取ろうとする)別種族は出てこない方が確かにリアルで、しかしそれだと人類側が色々推測するだけで終わってしまうので、この書き方はいいですね。
そして内容には関係ないけど、これら短編は訳すのがすごく難しいだろうなぁ…と想像。色んな意味で。
特に「人類が出会う生命サイド」は人間の常識範囲外だから、原文で読んでても難解だろうし、そもそも表現が比喩的なんだろうなぁと思う。
さぁ、人類がどんどん惑星へ進出してきて、次の展開にワクワクしてまいりました!
リゼール
太陽がヤバイらしい、ということで人の手で産まれた超人類リゼール。これもこの短編自体の物語性は薄いです。
SFの中では、「天才系※」に近い内容です。
リゼールが思春期ごろの描写まではそれなりに書かれてるのに、そのあと急に90歳くらいに飛躍してしまったのが少し残念だった。
明らかに超人類だけど、思春期があったりとか、ゲームにハマる中二病な時期があるなど人間的なので、
そのまま20代、30代、せめて母フィリーダの歳を超えるあたりまでは描写して欲しかったなぁ。
※天才系
私の勝手な分類(笑)。
ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」、イーガン「理解」など。
パイロット
「スクウィーム」に侵略された時に辺境の星に逃げおおせた人たちが、スクウィームからのロケットから逃げて逃げて逃げまくる話。これはニュージャンル。「避ける」じゃないですよ「逃げる」です。
星自体を船にして、追尾型ロケットから逃げる、という逃亡劇です。
一定距離を保ったまま、お互いがバージョンアップしながら速度を上げていくだけなので、接触もドンパチも全くないのですが、「追いつかれるか?!」「そのまえに手詰まりになるか!?」「ていうか重力に肉体が負けるのか…!?」と、結構ドキドキです。
最終的には訳あって超人類的な感じになるので笑 この人らがそのあとどうなるのかが気になるところ。
また後々の年代で登場しないかなぁ。
ジーリー・フラワー
時間も距離も
スイッチ
ジーリーが残したテクノロジーを発見したことで一悶着起こる話三本立て。「ジーリー・フラワー」は、「エネルギーが質量になる」物質を見つけたことで、結果的に命が助かり、スクウィームからの支配をひっくり返す力を持ったジョーンズの話。
「時間も距離も」は、女性がスクウィームの追手に一泡吹かせる?話。
「スイッチ」は、バレンタインがちょっとした嫌がらせの仕返しをする話。
基本はすべて「ジーリーの残したテクノロジーを発見」して、ポジティブな終わり方をする話なのだけど、全部人間関係の話です。
SFなのもかかわらず、人間関係を描き切るのはバクスターさんの得意とするところなんですね。
私の好きなテッド・チャン氏もそうですが。
「時間も距離も」は、特にわかりやすくかつスカッとする話です。
「彫像」いいやつじゃん。
















