愛を積むひと

2015-06-16邦画

愛を積むひと (小学館文庫)友人が試写会に誘ってくれて、行ってまいりました!

いつもどおりネタバレありです。
こういうのって書いても大丈夫よね?

原作はエドワード・ムーニー・Jr という方の「石を積む人」という小説だそうで。
事前情報を何も知らずに観たので、クレジットで原作があることを知りました。


石を積むひと (小学館文庫)

こちらが原作訳とのこと。
公式サイトにて監督の朝原雄三さんいわく「登場人物も物語もすっかり変更することになってしまいました」とのことらしい。
これはぜひ読んでみたいです。




190分ほどの長めの映画だったのですが、演出が素晴らしく、とってもいい映画になってると思います。

邦画をあんまり観ないからなのか、いろいろ語ってしまったw


演出と作りが、派手じゃないけど丁寧でとても良い

往々にして、小説の映画化(特に、日常描写や何気ない人間関係を描く、非常に繊細な作品)は、ぜんぜんだめ… になる事が多いと思いますが、その点この作品は上手いのではないかなぁと思います。

「原作をそのまま再現しきったからこそ素晴らしい」という作品もあるけど、
「伝えたいことを90分で伝えるためにシナリオや登場人物を変更した」作品で、「いい作品だなあ」と思うことは多くない気がしているので、監督さんGoodJob.

釣りバカシリーズとか、コメディ寄りの映画監督さんなのに、泣かせ系家族愛映画を演出できるってすごいなと最初は思ったんだけど、
そういう「日常系」で笑いもありちょっぴり感動しちゃったり、という映画でヒットを生み出す人と考えれば、日常描写で感動させるのが上手いのは自然かあ、と。

「語りが一切ない」のも良いですね。
普通、暮らしている中で誰かが「語り」をして状況や気持ちを説明してくれるってことはありえないわけで、そういうのが無いからこそ身近に感じられると思うのです。
上手いです。(よくある手法かな。?)

音楽も含め、演出や展開にほとんど違和感がなく観れました。

そして何よりも、不思議な感覚がするのが、
物語のキーポイントとなる、「不倫」「浮気」「再婚」などというショッキングな事態を、直接表現しないところ。
「中絶」とか「シングルマザー」とか、とにかくそういう単語が一切出てこないのです。
これが意図されてそうなっているとしても、結果として「すごく良い」のかどうかが分からないので「不思議な感覚」なんだけど。

・父と聡子の間にどんな確執があったのか、「観客側への説明」と考えられるシーンは一切なし ← 篤っちゃんと聡子の少ない会話から、分かるだけ

・さえちゃんの母親がどんな理由で離婚あるいは独身での妊娠をしたのか、一切わからない ← でも、そこから生まれる状況は見事に描いているので問題なし


キャストと演技はマル。

妻役の樋口可南子といえば、「明日の記憶」の名演技が記憶に強いところ。

「明日の記憶」も、頑張り屋さんで陽気で健気、素敵な妻すぎて、観ているこっちが息苦しくなるような設定で、(まあ、女性ってみんな強いよね…)
そういう設定って「キャラクターが生きてない」「都合よくシナリオに乗せられただけのキャラクター」っていう酷評をすることも多いのですが、さすが大女優、そういう違和感なく良妻を演じてますね。

佐藤浩市、北川景子、それから徹役、さえちゃん役、さえちゃん父もよかったです。

さえちゃんもね、ちょっといい子すぎですけどね…。
キャラクター設定については気になる点があるので後述。


シナリオ上手いよね?。

フライヤーとかアオリ文の、「手紙が紡ぐ云々…」ってところだけは直前に目を通していて、「いま、会いに行きます」とかの、ネタとしてガッツリ手紙が活躍するのかと思っていたのですが、そうでもないです。

「いま、会いに行きます」系の創作物語は、「まあ、実際には絶対そんなこと起こらないけどね」という、いわばファンタジーだから、ファンタジーがあまり好きではない(SFは別)私としては、"そう"だったら嫌だなあと思ってました。

全部で手紙は3通。(だっけ?)
すべて短め(便箋1枚)です。

それも、なんというか、「きっとこのあとまだ手紙が出てくる」のは受け手にもすぐ分かるんだけど、その手紙が出てくる展開が露骨じゃないのです。

全体を通して言えば、「妻が死んだ後、手紙を見つけて生き方が変わる」という大雑把な展開は全員わかっているのだけど、これも自然な感じでとても身近に感じました。
もし実際、そうやって「まとめられた」ノンフィクションがあったとしても、実際起こっている出来事はそんな単純じゃないわけですよね。

いきなりそんなコロッと変わらないですよ普通はね。

さえちゃん家族と徹のくだりはさすがに「おいww 展開(がはやい)ww」とも思ったけど、主題は「篤っちゃん」なので、まあ良いと思います。
あそこ、さえちゃんサイドからすると超大事なところなのにすっ飛ばしたから、あのあとさえちゃんの母は一度も登場していないのではないかと勝手に思ってます。


頑固で不器用な男と、健気で儚い賢い女

さてさんざん褒めましたが、キャラクター設定、これは露骨です。

いや、「露骨だからだめ」なわけではなく。

露骨だからこそ、「よくあるリアル」の象徴としてキャラクターが登場するので非常に良いとも思う。

ただね、とくにさえちゃんが、ちょっと「こうあってほしい少女」のステレオタイプすぎて。。。
「こうあってほしい妻」のステレオタイプである良子とさえちゃんの2ショットは、これは正直ファンタジーだった。

いやー、さえちゃんみたいな女子ね、いますよ?
いるし、ああいうさえちゃん要素を、全女子少なからず持ってますけど。。

そして篤っちゃんを筆頭に「頑固で不器用な男」3連発。

よくある、いやーほんとによくあると思うんだよ。よくいると思うの。こういう男。
すごく個人的な話だけど、自分の父親は篤っちゃんを悪い方向にパワフルにしたような人(不倫なんかしたらガチで縁を切ってくる)だから、夫婦のやりとりとか「わかるわー」「あるある」って思って観てたけど、主要男性3人が全員そんな感じだったので、ちょっとお腹いっぱいに。。

とはいえあそこで陽気な男が出てくる必要性も特に感じないので、まあいいと思うのですが。



以上、しかし総評してとっても良かったなぁと思います!