ジョージ・オーウェル / 一九八四年[新訳版] (2009年 高橋和久 訳版)
SF好きとして読むべき、みたいな意見をどこかで聞いたので、積読しておいた本。これはさすが名作というべき作品。読んでおいて損はないと思う。
世界観の設定と描写がとにかく徹底されていて、似たような内容の描写がとても多いにも関わらず、少しも読み飛ばしできないです。
党のやりかた全体が単純かつ極端だからなのか、「ビッグ・ブラザー」「思想警察」「ニュースピーク」「ダブルシンク」といった単語が現実世界のなにかを象徴する言葉として派生的に使われるのも納得がいく。
というか、使いたくなる。w
さすが名作。
1949年刊行、今から65年も前なんですね。当時からしたら約40年後を書いた作品。
今はすでに、さらにその15年も未来にいますが、色褪せないどころか、今だからこそ考えさせられる内容とも言えそうです。
古典名作SFの中には、「あの時代にこんな未来を想像できていたなんて、その先見性たるや」みたいな作品もあると思うのだけど、この作品はそういうところはほとんどないです。(まあ、技術革新が止まっているという設定もあるわけだし。)
徹底的に最悪の独裁主義社会イングソック(少数独裁制集産主義)を描く。
第一章を読み終わったあたりで「これSFじゃないよね…^^;?」となりつつも、面白いので読み進む。
どちらかというと政治フィクション。調べたらPolitical Fictionってジャンルがあるんだね。
ついでにPolitical Science Fictionってのもあるんだね。
この本はどっちにも分類されてます。
あまりサイエンスなところはないですが、きっとSF好きはこういうこと考えるの嫌いじゃないと思うので、どっちにしろオススメです。
こういう、世界観が出来上がりすぎている長編ディストピア作品の場合、だいたい結末は決まっていて、あまり「ただのハッピーエンド」になることはない。
この作品はどっちに持っていくか?とドキドキしながら読んでたのだけど、途中、魔が差して一番最後の一文を読んでしまった。
中盤、かなり長いからねw とくに「寡頭制集産主義の理論と実践」が。
どちらにしても、希望のある終わり方をしてます。(と私は思う。)
解説は必ず読むべし。現代について考えさせられる
さて 解説を読むのと読まないので大分印象が違います。解説では、発表当時の政治情勢を結構とりあげていて、当時どういう状況だったかっていう勉強にもなるし、その人々がどういうふうにこの小説を受け取ったのかが想像できて面白い。
フィクションにも関わらず、歴史と政治の勉強になりますね。
それと、ちょっと鳥肌たったのは、ダブルシンクは今の世の中でもされている、っていうくだり。戦争をつくりだす国防省、人権を踏みにじることもしている正義の省である司法省、スピンをしている真実を伝える報道機関、、、、うぅむ。反論できないかも。
冒頭で「単純かつ極端だから」って書いたけど、それって本当に的を射ている気がします。「そんな馬鹿な話あるわけないw」と信じつつ、たまに脳裏をよぎる妄想みたいなものを、徹底的に描き上げることで概念に昇華しているというか。スゴイなぁと思う。
最後はあんな展開で終わるけど、そのあと「ニュースピークの諸原理」が過去形で語られるという希望の描き方。これもすごいです。
設定上は1990年か、2000年ごろに書かれたものじゃないかなぁと予想。
丁寧な人物描写で世界観がわかる
人物描写については、思いのほか情動的な感じで書かれていて、作品全体の醸し出す暗い雰囲気にあっても、好感があります。ウィンストンがどうしようもないオッサンにしか見えなかった序盤から、ジュリアと出会って美しさとは何かを感じる中盤、そして拷問にあっても「四本にしか見えない」と主張し、その状態で「あなたは敗北する」と言い張る終盤。正直拷問中のウィンストンはイケメンだった。
ジュリアに関しては、最後まであからさまな裏切りをけっこう疑っていたのだけど、正直かつ素直で非常によいですね。ウィンストンが一人でグダグダ考えていたことをスパーン!!と言い切るところとかは中盤結構救いになってました。
(いまパラパラ確認したけど、ジュリアと出会ってからオブライエンと繋がる「その時が来た」まで、80ページ程度しかないことに今更驚き!!ジュリア篇はてっきり全体の3/1くらいはある読後感だったので。ついでに「長いなぁww」と思いながら読んでいた「寡頭制集産主義の理論と実践」(Oligarchical Collectivism。旧約では「少数独裁制集産主義の理論と実際」?)は約50ページありましたw)
典型的なダブルシンク党員であるパーソンズ、いわゆる特殊な方向に頭の回り過ぎるオタクであるサイム、なんとなく怪しい気もする骨董屋のミスター・チャリントン…。
最低限のキャラ配置があって、不足感はあんまりありませんでした。
パーソンズとサイムが出てこないと、この世界における一般的な人々ってのがイメージしづらいからね。
たとえ二人が少々特徴的すぎたとしても、この二人が出てくることで世界観がだいたい分かるようになっている。
それから読んでいる最中、どれだけ気が乗らなくても苛ついても、ニコニコハキハキ善の意識を持って同僚と接したり取り組まなくてはいけない仕事を思い出すと、これのどこがダブルシンクじゃないと言えるのか・・・となんだか暗い気持ちにもなりましたw
いやほんとにw
原文が公開されているようなので、ちょこちょこ読みたい気分。
これは読むべき名作ですね。読んでよかった。
















