河合拓 / ブランドで競争する技術

2015-08-06interest 好奇心, manage-strat 経営・戦略・思考, PR 広報・ブランディング

(2014/10/13 再読により追記)——————————–

中川淳、 西澤明洋「ブランドの育て方」を読んで、思い出したので五章までバーっと再読しました。


商社で繊維系の仕事をしたあと、コンサル(顧客は主にファッション)業界を長らくやってきた河合さんならではの小ネタが散らばっていて勉強になります。

いまだに日本人は「ブランド」っていうと、「イコールデザイン(感性に寄るもので、評価できない泡のようなもの)」というイメージをしがちな気がしますが(最近は「ブランディング」って言葉がひとり歩きしなくなってきたような気はする)、この本は徹底的に経営目線で淡々と事業をどうするか、っていう話をしていきます。

視点が経営戦略者だし、コンサルとしていろいろな部署や現場を見てきてる方だと思うので、どの立場の人が読んでもためになるはず!
請負業の自分からすると、メーカーや商社の事業形態については知らなさすぎて、全体的に「へ~」という感じ。
ファッションメーカーの経営戦略とかやっている人にぜひ一読した感想を聞きたいところ。


気になったポイントまとめ
ちょいちょい引用も交じるけどほぼ自分の解釈文です。

・ブランドとは、「差別化され、確立された価値を持つ(差別化された価値の品質保証)もの」

・そのブランドしか持つことの出来ない3つの価値

1:機能価値  (商品そのものが持つ価値。)
2:サービス価値(ホスピタリティとかに代表される価値。)
3:イメージ価値(ブランドが醸し出すイメージの価値。)


・競争戦略の観点から見れば、差別化されたポジションを確立しているという点では、ルイヴィトンもユニクロも同じであると考えて間違いない。

・「高いお金を払ったのだから長く使えたあたりまえ」と考えてしまいがちだが、機能価値とイメージ価値は価値の大きさについては全く別物。カシミヤって実は耐久性は悪いし、安いクオーツ時計の方が高級時計よりも時間のズレは少なかったりする。

実際、イメージ価値を評価し、生み出す能力を持つためには、「センス」というものが必要になってくる。センスというものは、自分が実際に体験したり、感じたりしないと身につかない。…(中略)…イメージ価値の構築は「ノウハウ」ではなく「ノウフー」だ、と言われるのはこのためである。

・業績が悪化した小売企業が売上をあげるために取りうる手段は、既存の事業・既存の店舗の売上を上げるか、新たに新規の店舗を出店するか、新しい事業を立ち上げる、という方法しかない。

・その価値軸が持つ世界観を守るためのルール、すべきこと、してはならないことをはっきり認識させ、組織に共有させる。 … ブランド化は、日々の活動スタイルを見直すことを通じて、事業の体質そのものを変えていく活動であると考えるべきだ。

・クリステンセン教授によると、優れた企業は顧客のニーズに答えることを優先し、製品や商品の改良を進め、顧客ニーズのないアイデアは切り捨てていく。これを「持続的イノベーション」と呼び、既存製品・商品の価値を破壊するようなまったく新しい価値を生み出すことは「破壊的イノベーション」と呼ぶ。

・しかし、市場分析というのは、きっちりやればやるほど、「世の中にすでにあるもの」について深堀りしていくことになる。……現在市場に存在しないものの可能性を見出す、いわゆるブルー・オーシャン戦略というのは、通常のマーケティングの分析の延長線上からは見出しにくい

・…考えている間に世の中のトレンドが変わってしまうからだ。「いける」と思ったら、ある程度の分析をおこなったうえで、できるだけ素早く実行に移し、市場にその是非を問いかけ、当初立てた仮説を微修正しながら成功に近づける、というほうが成功の実感値が高い。

・…彼らは、「ブランドの成長性」をマーケティング的観点から説明してほしいとせがむのだ。そんな彼らに私は、「それは、パチンコを始める時、どの台がよく出ますか、と聞くようなものです。そもそも、検討すべき視点が違うのです。」と答える。
…つまり、既存のブランドの成長性にあれこれ悩むのではなく、「すでに固定的なファンを持ち安定した収益を稼げるブランド」を持っていることが、投資対象として成立するか否かの判断になる。

・事情計画立案の3ステップ ①放置シナリオをつくる → ②改善シナリオをつくる → ③成長シナリオをつくる。
③ばかりの事業計画はつまり「パチンコで生活費を稼ぎましょう」状態。

・新しい事業を立ち上げて成功した仕掛け人に、その成功要因を聞いてみると、「とにかく市場をみていた。平日も休日も街に出、店を見、人を見ていた」と答える人が多い。従来にない、新しい価値観に辿り着いた人は、何かを始める前に「見えている」という感覚を持つという。

このあとは組織の話など、大企業となって身動き取りづらくなった大企業がどうすべきか、的な議論に移っていったので、ブランドってなんだっけっていうおさらいとして読んだ今回はここでストップ。

(2012/11/05)————————————————-
尊敬する人の一人であるので購入。

さすがという感じでしょうかね。
私は仕事柄こういう領域にはまったく足を突っ込みませんが、面白く読めました。

やっぱり「そもそも論」「顧客の論理」を強調している点が「らしい」と思いましたが、ソレを実行に移してきた経験のある人の言葉ということで重みや説得力が格段に違うし、実践に役立つエッセンスが多いんじゃないでしょうか。
HowTo本は重みが足りないんだよね。仮に正しいことを言ってたとしてもね。

それにやっぱ、コミュニケーションとリーダーシップと信念よね。一言で無理矢理ひっくるめると人望とでもいうかな。
それはコンサルだけじゃなくて。
身近な例でも、やっぱ、権力あるかないかとはそこまで関係ないんよね、誰を信用して、誰についていきたいか、信頼するかっていうのは。

ターンアラウンドの現場には行く機会も行きたいと切望することも今のところないので、何か実践にすぐに移せるわけでもなけど、経営者や上流の考え方を(視野を広く保つという意味で)学べて満足です。

しばらく現場人間だけど、少しでもそういう視野を現場から生かしていければ。

面白かったです。