David Brooks / The Social Animal あなたの人生の科学(訳:夏目 大)
本屋で偶然見かけて。
今年No.1ノンフィクションです。
とってもおすすめ!
The Social Animal
邦訳版のタイトルは「あなたの人生の科学」となっていますが、原題は「The Social Animal – The Hidden Sources of Love, Character, and Achievement」です。この邦訳、珍しく逸品だと思いますが、やはり本書の主題を一言で現すなら「The Social Animal」でしょう。
とても一言で要約できるような話ではないんですが、無理やり要約すると、こんな感じかなと思います。
「
理性や意識や自分、科学や論理というものを過信しすぎていないか。
人間や社会や人生というのはもっともっと複雑で、互いに影響しあって存在している。
謙虚にそして積極的に、絶えず真摯に生きていくことが幸せにつながるのではないか。
」
でも、こういう話を延々とする、説教じみた話 では決してありません。
ロブ、ジュリア、ハロルド、エリカという架空の人物の人生を追いながら、哲学、経済学、心理学、脳科学、社会学、その他諸々、色々な研究を引用し、人間や人生とは何なのか、淡々と説明が続きます。
引用元が膨大だし、作者はジャーナリスト(オビにはコラムニストとある)で、各方面の専門家なわけではないので、それぞれの説明はウワズミを掬うレベルに近いです。
それでも、エリカ達の人生に乗せて説明が出てくるので、非常に分かりやすくなってます。
物語性について
人物の物語部分は、淡々と書いてある風にも関わらず、そんじょそこらの小説に引けをとらない、深みのある素敵な物語になってます。特定のエピソードのために都合よく作られたキャラクターたちの物語、に圧倒的に足りないのはこの「キャラクターの人生観」だと思うんだよね。
どうもキャラ設定が適当で浅い物語になってしまう、という作家がいたらぜひ見習ってほしいくらいですw 上からw
それから、人生を死ぬまで追っかけている内容ですから、「自分に近しいテーマ」がどっかに出てくる可能性が高いです。
主人公たちと歳が近かったりすると、彼らの人生のあれこれに自分を重ねて読んでしまい、真に迫るものがあります。
自分はちょうどエリカがハロルドと出会ったあたり。
大学、会社勤め、起業、結婚…、その辺は非常に胸が熱くなりました。
彼らは非常に高い地位を得ていくので、今後はイベントごとに対しての共感事態はしにくくなる可能性は高いですが、歳を重ねて視点が変化してきた、ということについては変わらずヒントになってくれるのでは、と思います。
そういう意味では、子供のうちに読むのはもちろん非常に良いと思うし、歳を重ねてから読んでも、十分に意味のある本だと思います。
自分はぜひ、読み返したいと思ってます。