落合 陽一 / これからの世界を作る仲間たちへ

クイック本(さくっと読める), IT, self-dev 自己啓発/リーダーシップ, social 社会

前著が面白かったので、こちらも購入。

さくっと読めるし旬な内容なので、いまこそ暇つぶしにでも読むのをおすすめ。


若者向けだがかなり鋭角

中高生がメインの読み手として意識された(たぶん)、「これから世の中はこんな風に変わっていく。その中でいかに生きていくか。」という内容です。

たぶん、自分が中学生の時にこれを読んでいたら、単語や概念は難しすぎて理解が追いつかないけれど、
やっぱり(「いつかの政府が作り上げた人生設計における一般論」を信じていたら)ヤバい、
という猛烈な危機感を覚えたのではないかと思います。

「コンピュータは電化製品ではなく……たんぱく質の遺伝子を持たない集合型の隣人」
「ホワイトカラーはコンピュータに代替されているし、今後もそうなる」
「ディープラーニングが猫を認識し、シンギュラリティ(人工知能が人間を超える瞬間)の到来が高まっている」
「コンピュータに管理されるブルーカラーとしての仕事はむしろ人間の仕事として残る可能性がある」
「使われる側になるか、使う側になるか」

こんな感じのテンションですので、質の悪いハードSFよりずっとハードSF。

口語で勢い良く語られた内容をそのまま書籍にした、という感じなので、
体型だてられた知識とか研究結果とか、深い考察等が書かれているというよりは、
「現代の魔法使い」さんの講演を聞きに行った感じの本です。


目指すのが「ホワイトカラー」の時代は終わる(った)

まず前半で何度も出てくるのがこのテーマ。
いくつか引用してみます。

たしかに、優秀なビジネスマンになるためには、処理能力の高さと根回し能力が必要でしょう。
でも、ホワイトカラーのビジネスマンの社会的寿命がコンピュータの台頭によって尽きようとしているときに、そのためのスキルを磨いても仕方ありません。
(中略)
それなのに、多くの啓発書は相変わらずホワイトカラー教育を志向しています。

これまでは、「営業に回って仕事を受注する」「見積書を書く」「クライアントの要望を現場に伝える」といった中間的な仕事をホワイトカラーが担っていました。しかしクラウドソーシングは、そのプロセスに関わるコストを限りなくゼロに近づけてしまいました。
ホワイトカラーは何かを効率よく処理するための「歯車」です。そして、処理能力の高い「歯車」はいずれコンピュータに居場所を奪われてしまう。
処理能力の高いホワイトカラーを目指せばよかった時代には、受験勉強にもそれなりの意味がありました。
(中略)
ホワイトカラーの仕事は、与えられた問題を解決することにほかなりません。だから学校の試験と同じで、いろいろな問題の解き方をたくさん知っていればいるほど、処理能力は高まります。
(中略)
しかし、クリエイティブ・クラスの人間が解決する問題は、他人から与えられるものではありません。

それは、「誰も持っていないリソースを独占できる者が勝つ」という原理です。
(中略)
しかし、コンピュータが発達したいま、ホワイトカラー的な処理能力は「誰も持っていないリソース」にはなり得ません。


このあたりは、「ホワイトカラー」として日々汗をかいているビジネスマンからしたら
「俺の人脈やコミュニケーション能力がコンピュータに代替できるはずないだろ」
「実際にはIT化できないような微妙で繊細な価値ばかりなんだ!」
と言い返したくなる箇所かもしれません。

私も正直なところそう思う気持ちもありますが、「一部のトップクラスのホワイトカラー」以外は、
大きな流れとしては落合さんの言うとおりかと思います。

そんな中、「魔法をかける側」として「クリエイティブ・クラス」を目指すべきなのではないか。

そして、「人間だけが持つ優位性は『モチベーション』しかない」ということや、
「それをどうやって活かしていくかを真剣に考えろ」という内容に続いていきます。


「自分が解決したいと思う小さな問題をさがせ」

さて、ここからは怒涛の「じゃあどうするの?」。

いずれにしろ、情報がシェアされる時代に自分の価値を高めるには、簡単にはシェアできない、そしてイメージすることのできない暗黙知を自分の中に深く刷り込んでいくしかありません。

オンリーワンかつナンバーワンになること。
本当にオンリーワンであればナンバーワンになるはず。
結構ハードルは高めです。。
でも、「そんなに難しいことじゃない」という感じで実践を促していきます。

「何の専門家として生きていくのか」を見つけるための大事なポイントが書かれています。

おそらくこれは、事業をやっているいい大人であっても、
本当にしっかりと時流と自分自身を見つめなおし、反芻した人じゃないと
さくっと回答できない内容だと思うなあ。

・それによって誰が幸せになるのか。
・なぜいま、その問題なのか。なぜ先人たちはそれができなかったのか。
・過去の何を受け継いでそのアイディアに到達したのか。
・どこに行けばそれができるのか。
・実現のためのスキルは他の人が到達しにくいものか。


実はこれとほぼ同じことを、私は別の人に聞かれたことがあります。(!)

本当にオリジナルで思いついたというよりは、おそらく著名などなたかが、
これと似たようなことを述べられてるんじゃないでしょうかね。

もちろん、自らの考えからこの表現に到達したのかもしれませんし、
そうでなくても、その本質を深く理解し共感した人が、伝聞してくださっているのでしょう。

これらを見つけるコツとして、「自分が解決したいと思う小さな問題を探せ」とのこと。

個人的に大好きだった表現も引用しておきます。

「実装」と「アイディア」が個人の中で接続することに意味があるのです。



思考体力、ロジック(コミュニケーション能力)

そして、クリエイティブ・クラスとしての心構えといった内容に続きます。

このへんは、作者も前半でボロクソ書いていた「ホワイトカラー向けの啓発書」(に分類されると私は思う)ではよく出てくる内容かなと思います。
戦略コンサルの方なんかが上手いことプレゼンしてくれそうです。

例えば思考体力の話。
突き詰めて考える癖をつける。
それが、自分にしかない「暗黙知」につながっていく。

それからコミュニケーション能力の話。
これも「皆と仲良くやりましょう」という話ではなくて、
問題解決のために、ロジックをコミュニケートできるかどうかという話。

重要なのは、「言語化する能力」「論理力」「思考体力」「世界70億人を相手にすること」「経済感覚」「世界は人間が回しているという意識」、そして「専門性」です。

あああ。
果たしてこれらを身につけることができている大人はどれくらいいるのでしょうか。

そろそろ若手じゃなくなってきた自分にもズシズシくる章でした。


あとは、「変態」のお話ですね。

私が「ギークが最強だと思う」「オタクのポテンシャルは無限大」とか言っているのとほぼ同じ理由です。

大人もぜひ、一読したいところ。