テレサ・アマビール、スティーブン・クレイマー / THE PROGRESS PRINCIPLE(マネジャーの最も大切な仕事)
「プロジェクトをいかに成功させるか」といったようなプロジェクト単位での、そして小手先のマネジメント手法や心構えについてではなく、もっと直感的にわかりやすいマネジャーの「振るまい方」のヒントをくれる本。
誰かの上司やなにかのマネジャーになったら一度は読んでおきたいところ。
ハーバード大の著者らが、協力を承諾した複数の会社のチームの日誌を毎日収集する、といった方法などで取得したデータに基づいて執筆した調査結果でもあるので、特定の個人が自分の経験をもとに独善的に語る成功論理ではなく、その点も安心して読めます。
原題は、
「進捗の原理 ~仕事における喜び、契約(約束)、そして創造性のための小さな勝利~」
そして日本語タイトルはこちら。
ということで、タイトルでほぼほぼ言いたいことが書いてあります。
少なくとも、少しでも「マネジャーとしてもっと成果を出すためには」と悩んだことのある人なら、このタイトル、そして本書の序盤を読めば何が言いたいのかは大体分かるのではないでしょうか。
というか「序章」にすべてだいたい書いてあるので、時間がない方は本屋で序章を立ち読みするだけでもいいかもしれません(笑)
ただ、「直感的に分かりやすすぎて」、気を抜くと手段に落とし込むのを忘れそうになりそうな内容です。
改めて重要と思ったところをまとめ、自分なりの手段に結びつけておきたいと思います。
そういえば、冒頭にコメントを寄せている監訳者が竹中竜二氏なんですよね。
この方の本は一冊読んだことがあります。竹を割ったようなスカッとする文章で読みやすいですよ。
ちなみに、調査対象は82%が大卒で主に専門性をもった社員や専門家で構成された、「商品開発」などの創造性のある仕事をするチームだけを選別しているので、いわゆるエリート組織に近い実例がほとんどです。
なので自組織にしっかり向き合わずに、ただ本書に出てくる実例を猿真似してもあまり効果はないと思われますから、そういう意味でもポイントをちゃんと理解しておきたいと思います。
その秘訣は、豊かなインナーワークライフ(個人的職務体験)を生み出す環境を作り上げること。
ポジティブな感情、強い内発的なモチベーション、仕事仲間や仕事そのものへの好意的な認識を育める状況を作り出すこと。
インナーワークライフが豊かになれば、会社も豊かになる。
相互依存的な各要素が絡み合うシステム。
認識:事実と、その意味を理解しようとした末の認識
感情:出来事に対する、喜怒哀楽といった感情
モチベーション:その仕事をするかしないか、どう向き合うか
人は日々、これら3つが相互に影響しあって、総合的に「ポジティブ」に感じてパフォーマンスが上がったり、「ネガティブ」になって仕事に手がつかなくなったりする。
※ちなみに少し話は逸れるが、モチベーションは以下の3つに影響を受ける。
1,内発的動機づけ
2,外発的動機づけ
3,関係的/利他的動機づけ
よく言われるのが「2,外発的動機づけ」で、これがいわゆる給料や評価を得るために頑張る、という「ご褒美」的なやつ。
「3,関係的/利他的動機づけ」は他人と関わったり助けたいという理由で仕事するやつ。
そして「1,内発的動機づけ」は「仕事自体が、面白く、楽しく満足でき、熱中でき、個人的な挑戦だから」やるというやつ。
本書ではここはあまり掘り下げて無くて、ただ「2が強すぎると、多くの人が少なくともキャリアの初期には持っているはずの「1」を妨害する可能性があるから気をつけよ」と述べてます。
更についでに、本書では述べられてませんが、この「1,」を搾取して働かせようとするのがブラック企業であり、いわゆる「やる気搾取」企業ですね。ベンチャーは一歩間違えるとこれになりがちなので、気をつけたいところ。
■生産性
■コミットメント
■同僚性(collegiality)
というパフォーマンスの四要素。とにかく、インナーワークライフがポジティブだと良いことづくめということ。
これらを提供し、インナーワークライフをポジティブな状態で維持することが大事。
ただし、このネガティブな要素のほうが、ポジティブな要素よりも2~3倍くらい力が強いので、ネガティブな要素が発見されたら、まずはそれを解消する、という見方を優先したほうが良いでしょう。
多くの人は「いい仕事に対して(正当な)評価をすること」と答えるが・・・・・ 実はそれよりも「進捗すること」のほうが影響力が強い!
四天王の中でも最弱・・・・・!じゃなくて、三傑の中でも最強!という感じですね。
それが「進捗」。これを進捗の法則と呼びます。
「いい仕事に対して評価をすること」は、3大要素でいえば「進捗」に含まれるのではないか?と思いますが、仰々しく評価されたその結果よりも、小さくてもいいから日々、やりがいがある仕事が進捗している!と感じることが大事。
(※触媒ファクター、栄養ファクターよりも影響が大きい)
ちなみにこれはなぜかと言うと、
まず人は多くの時間を仕事に割いているため、アイデンティティを仕事に重ね合わせている人が多い。
そして人間の最も基本的な原動力の一つが「自己効力感(望むものを達成する能力があるという信念)」であり、「自分には価値がある」と感じると気持ちがいいからだ。
だから(人生で多くの時間を割く仕事で)「やりがいのある仕事が進捗する」ということはメッチャ気持ちよく、イキイキするわけである。
だからマネジャーは、部下やチームが「やりがいのある」仕事だと自覚させた上で「進捗」するようにサポートするのが最も大事である。
以下のようなことにさせないようにする。
風土は以下のように、「アイデアの尊重」「強調」「コミュニケーション」という三大要素を持っている。意識したい。
端的に言えばよい人間関係のこと。
以下の4大栄養源を意識して。
仕事をやり遂げる力を信頼していること…
また、人間関係のサポートは、マネージャー対部下の間だけではなく、部下同士にも発生するので、ここもよい関係性でできるようチーム割り(人事采配)に気を配ること。
・クレームの内容を詳細に説明し、各メンバーから分析を求めた ・ミスを探ったが、誰かを責めるようなことはさせなかった ・対処完了後、再びチームを招集(して結果を伝えた)
・全員に危機を振り返らせ、解決策を評価し、そこで得た知識を復習
・力を合わせていくつかの教訓を引き出した
・オフィスにいないときは電話を歓迎している
・報告を待つのではなく自然に状況を取りに行くようにする
・裁判官や独裁者のように取り調べて口を出すのではなく、定期的にメンバーの中に入って一緒に検討する
(感情はポジティブなものか、ネガティブなものに注意が偏りがちだから)
・チェックリストの目的はやりがいのある進捗をマネジメントすることであって、
・組織あるいは社員を管理することではない
やりがいのある仕事とは、難しい仕事である全く問題が起こらないよう促すのではなく、避けられない障害を乗り越えるために必要な触媒ファクターや栄養ファクターを提供することに尽力せよ
悪循環を断ち切るのは好循環の維持より難しいことだが、これをすべき
また、マネジャー自身のインナーワークライフは「部下(チーム)」の進捗にの最も影響される。
なので結局部下(チーム)の進捗に気を配るのがよい。
ここでも、日誌を付け、傾向を振り返ると良い。
一応スライドでまとめていたので、GoogleSlideにインポートしたものを貼っておく。
誰かの上司やなにかのマネジャーになったら一度は読んでおきたいところ。
ハーバード大の著者らが、協力を承諾した複数の会社のチームの日誌を毎日収集する、といった方法などで取得したデータに基づいて執筆した調査結果でもあるので、特定の個人が自分の経験をもとに独善的に語る成功論理ではなく、その点も安心して読めます。
“進捗”を自覚することで起きる効果
タイトルを確認しておきましょう。原題は、
THE PROGRESS PRINCIPLE直訳すればこんな感じでしょうか。
Using Small Wins to Ignite Joy, Engagement, and Creativity at Work
「進捗の原理 ~仕事における喜び、契約(約束)、そして創造性のための小さな勝利~」
そして日本語タイトルはこちら。
マネジャーの最も大切な仕事
95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力
ということで、タイトルでほぼほぼ言いたいことが書いてあります。
少なくとも、少しでも「マネジャーとしてもっと成果を出すためには」と悩んだことのある人なら、このタイトル、そして本書の序盤を読めば何が言いたいのかは大体分かるのではないでしょうか。
というか「序章」にすべてだいたい書いてあるので、時間がない方は本屋で序章を立ち読みするだけでもいいかもしれません(笑)
ただ、「直感的に分かりやすすぎて」、気を抜くと手段に落とし込むのを忘れそうになりそうな内容です。
改めて重要と思ったところをまとめ、自分なりの手段に結びつけておきたいと思います。
そういえば、冒頭にコメントを寄せている監訳者が竹中竜二氏なんですよね。
この方の本は一冊読んだことがあります。竹を割ったようなスカッとする文章で読みやすいですよ。
ちなみに、調査対象は82%が大卒で主に専門性をもった社員や専門家で構成された、「商品開発」などの創造性のある仕事をするチームだけを選別しているので、いわゆるエリート組織に近い実例がほとんどです。
なので自組織にしっかり向き合わずに、ただ本書に出てくる実例を猿真似してもあまり効果はないと思われますから、そういう意味でもポイントをちゃんと理解しておきたいと思います。
インナーワークライフと、それらに影響する3大要素
どうすればビジネスの成功と社員の幸せという二重の楽園を築くことができるのか?その秘訣は、豊かなインナーワークライフ(個人的職務体験)を生み出す環境を作り上げること。
ポジティブな感情、強い内発的なモチベーション、仕事仲間や仕事そのものへの好意的な認識を育める状況を作り出すこと。
インナーワークライフが豊かになれば、会社も豊かになる。
インナーワークライフとは
職場での出来事に対する反応や状況認識を通じて体験する、認識・感情・モチベーション の相互作用から成り立つもの。相互依存的な各要素が絡み合うシステム。
認識:事実と、その意味を理解しようとした末の認識
感情:出来事に対する、喜怒哀楽といった感情
モチベーション:その仕事をするかしないか、どう向き合うか
人は日々、これら3つが相互に影響しあって、総合的に「ポジティブ」に感じてパフォーマンスが上がったり、「ネガティブ」になって仕事に手がつかなくなったりする。
※ちなみに少し話は逸れるが、モチベーションは以下の3つに影響を受ける。
1,内発的動機づけ
2,外発的動機づけ
3,関係的/利他的動機づけ
よく言われるのが「2,外発的動機づけ」で、これがいわゆる給料や評価を得るために頑張る、という「ご褒美」的なやつ。
「3,関係的/利他的動機づけ」は他人と関わったり助けたいという理由で仕事するやつ。
そして「1,内発的動機づけ」は「仕事自体が、面白く、楽しく満足でき、熱中でき、個人的な挑戦だから」やるというやつ。
本書ではここはあまり掘り下げて無くて、ただ「2が強すぎると、多くの人が少なくともキャリアの初期には持っているはずの「1」を妨害する可能性があるから気をつけよ」と述べてます。
更についでに、本書では述べられてませんが、この「1,」を搾取して働かせようとするのがブラック企業であり、いわゆる「やる気搾取」企業ですね。ベンチャーは一歩間違えるとこれになりがちなので、気をつけたいところ。
インナーワークライフが影響を与えるもの=「インナーワークライフ効果」
■創造性■生産性
■コミットメント
■同僚性(collegiality)
というパフォーマンスの四要素。とにかく、インナーワークライフがポジティブだと良いことづくめということ。
インナーワークライフをサポートし得る要素
次の順序で以下が際立っている。これらを提供し、インナーワークライフをポジティブな状態で維持することが大事。
- やりがいのある仕事における進捗 ← これが最も大きな要素(=進捗の法則)
- 触媒ファクター(仕事を直接支援する出来事)
- 栄養ファクター(その仕事を行う人の心を奮い立たせる対人関係の出来事)
上記がネガティブな形をとる、もしくは欠落すると → インナーワークライフは大きく暗転する
それぞれ、上記と対比するとこのような表現となる。- 障害
- 阻害ファクター(仕事を直接妨げる出来事)
- 毒素ファクター(その仕事を行う人の心を蝕む対人関係上の出来事)
ただし、このネガティブな要素のほうが、ポジティブな要素よりも2~3倍くらい力が強いので、ネガティブな要素が発見されたら、まずはそれを解消する、という見方を優先したほうが良いでしょう。
3大要素の中でも最も最強なのは「進捗」だ!
社員を動機づけし感情を上向かせる最も重要な要素は?多くの人は「いい仕事に対して(正当な)評価をすること」と答えるが・・・・・ 実はそれよりも「進捗すること」のほうが影響力が強い!
四天王の中でも最弱・・・・・!じゃなくて、三傑の中でも最強!という感じですね。
それが「進捗」。これを進捗の法則と呼びます。
「いい仕事に対して評価をすること」は、3大要素でいえば「進捗」に含まれるのではないか?と思いますが、仰々しく評価されたその結果よりも、小さくてもいいから日々、やりがいがある仕事が進捗している!と感じることが大事。
進捗の法則
やりがいのある仕事が進捗することこそがインナーワークライフを向上させる最も協力な要因である(※触媒ファクター、栄養ファクターよりも影響が大きい)
ちなみにこれはなぜかと言うと、
まず人は多くの時間を仕事に割いているため、アイデンティティを仕事に重ね合わせている人が多い。
そして人間の最も基本的な原動力の一つが「自己効力感(望むものを達成する能力があるという信念)」であり、「自分には価値がある」と感じると気持ちがいいからだ。
だから(人生で多くの時間を割く仕事で)「やりがいのある仕事が進捗する」ということはメッチャ気持ちよく、イキイキするわけである。
だからマネジャーは、部下やチームが「やりがいのある」仕事だと自覚させた上で「進捗」するようにサポートするのが最も大事である。
仕事の価値を無くす行動を避ける
障害は進捗の効果より強いから、ネガティブな要素の方を取り除くという視点はかなり大事。以下のようなことにさせないようにする。
- 自分の仕事やアイデアがリーダーや仕事仲間から相手にされない
- 当事者意識が失われる
- 自分たちが従事している仕事が日の目を見ないのではないかと疑念を抱かせる(クライアントが要求する優先順位が予期せず変わる時も)
- 自分にはもっと能力があるのにと感じさせてしまう
触媒ファクター
2番目にインナーワークライフへポジティブな影響を与えるもの。- 明確な目標の設定
- 自主性の尊重
- リソースの提供
- 十分な時間の提供(与えすぎてはいけない)
- 仕事をサポートする
- 問題と成功から学ぶ
- 自由活発なアイデア交換
風土は以下のように、「アイデアの尊重」「強調」「コミュニケーション」という三大要素を持っている。意識したい。
- 言葉や振る舞いで社員や彼らのアイデアを尊重しているか
- 社内システムや手順は、個人同士やグループ同士の協力を促進するようにデザインされているか
- 組織構造は、組織の戦略的な目標とその達成に向けた社員のスキルに一致するか
- 明確で、誠実で、敬意のある、自由活発なコミュニケーションをしているか
栄養ファクター
3番目にインナーワークライフへポジティブな影響を与えるもの。端的に言えばよい人間関係のこと。
以下の4大栄養源を意識して。
- 励まし
- 尊重
- 感情的サポート
- 同僚意識など対人関係上のサポートを提供する様々な方法
仕事をやり遂げる力を信頼していること…
また、人間関係のサポートは、マネージャー対部下の間だけではなく、部下同士にも発生するので、ここもよい関係性でできるようチーム割り(人事采配)に気を配ること。
マネージャーができること
1、オープンに正面から問題に対処する
・トラブル発生 → 直ちにチームを招集・クレームの内容を詳細に説明し、各メンバーから分析を求めた ・ミスを探ったが、誰かを責めるようなことはさせなかった ・対処完了後、再びチームを招集(して結果を伝えた)
・全員に危機を振り返らせ、解決策を評価し、そこで得た知識を復習
・力を合わせていくつかの教訓を引き出した
2、毎日アンテナを張る(正確な情報を常に得られるようにする)
・オフィスにいるときはドアはいつも開けている・オフィスにいないときは電話を歓迎している
・報告を待つのではなく自然に状況を取りに行くようにする
3、[毎日]的を絞ったサポート
毎日アンテナをはっているおかげで情報が集まり、必要なサポートを適切に提供することができた4、上からでなく内からのチェック
・進捗を密に把握することと、マイクロマネジメントすることは違う・裁判官や独裁者のように取り調べて口を出すのではなく、定期的にメンバーの中に入って一緒に検討する
5、[毎日]日々の進捗チェックリスト
・慣れていても毎日5分でいいからチェックリストで振り返る(感情はポジティブなものか、ネガティブなものに注意が偏りがちだから)
・チェックリストの目的はやりがいのある進捗をマネジメントすることであって、
・組織あるいは社員を管理することではない
6、好循環の維持、悪循環の断ち切り
失敗を報告されたら「自分がしたことを理解している限り問題ない」と言おう(叱責するのではなく、そこから何を学べるかに的を絞る)やりがいのある仕事とは、難しい仕事である全く問題が起こらないよう促すのではなく、避けられない障害を乗り越えるために必要な触媒ファクターや栄養ファクターを提供することに尽力せよ
悪循環を断ち切るのは好循環の維持より難しいことだが、これをすべき
また、マネジャー自身のインナーワークライフは「部下(チーム)」の進捗にの最も影響される。
なので結局部下(チーム)の進捗に気を配るのがよい。
ここでも、日誌を付け、傾向を振り返ると良い。
一応スライドでまとめていたので、GoogleSlideにインポートしたものを貼っておく。