孫崎享 / 戦後史の正体

2015-02-09interest 好奇心, social 社会

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)
母にすすめられて読んだ本。
昔からあんまり「新書」とか「ベストセラー」っていう評価には興味が無い。
最近は意識して、信頼してる人とか、尊敬してる人の「何気ない評価」を頼りに本を数珠繋ぎに探すようにしています。

母は「読むといいんじゃない?それにしてもこの作者、暗殺されないか心配だわ」と評価。

母は何事も慎重派なので、政治関連の本について「オススメ」することは滅多に無い。
(というより「オススメする」ことが滅多に無いんだけど…)
ってことで、ここのところ「今と今後」を考える上で歴史~近代史に興味がわいてきていたので二つ返事で借用。


先に、「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地観光ガイド」とか、「スエズ運河を消せ マジックで戦った男たち」を読んでたりするので、多少は戦中~戦後の事情についてまぁまぁすんなり読める体制ではありました。

ので、あまりに衝撃的、という感じはなかった。
でも、ずっと昔からとっても知りたかった戦後史っていうのを、まさに「痒いところに手が届く」感じで解説してくれた本でした。


私がアホなだけかもしれませんが、これでも4大を卒業している私や、他の多くの若者が、おそらく、政治や近代史をよく知りません。

誰も教えてくれないし、どの媒体が「偏っていないか」まったくわからないからです。

学校で教わるのは、古代史と戦国史で、誇張でなく、大体、「明治維新」あたりで終わります。
(私は1987年生)

戦中史、戦後史もやらないことはないんですが、「もう時間がないしテストにはほとんどでないから」と、私がいた学校ではマトモに教えませんでした。
一応、センター試験用に歴代首相とその間に起こった出来事(事件の名前や協定の名前など)を、上から順番に暗記するだけです。
テストは出たとしても、「○代首相の××の頃、△△事件が起こった」を埋めなさい、みたいなレベルだからです。
イクヤマイマイ オヤイカサカサカヤ オテハタカヤキ…
そのころから母は、「学校では、現代に通じる政策を批判したとか偏った見解を教育したとかで糾弾されるのが怖いから、誰も教えない」といってて、今でもこれは正しいんじゃないかと思います。

ちなみに現代社会は、「政権分離について説明しなさい」とか、「小選挙区制度について答えなさい」っていう、いわゆる現代の社会システムの「ルールを確認」するものでした。
なぜ、どういう経緯で、どんな人たちが政権分離を唱えたのかとか、
なぜそういった選挙区制度になっていて、そのメリットやデメリット、またはその事例などを教えないんでしょうかね。
せいぜいこれは「社会のルールを覚えましょう」という中学生の問題であって、専門の先生がいる高校では後者のような教え方をすべきでは?
歴史の教科書は、××年、○○政権が誕生しました。○○は△△党の□代党首です。つづく××年、☆☆外務大臣が◎国を訪れ、◇◇協定を結びました。 みたいな、それこそ年表を無理やり文書化しただけの本です。

よって古代・戦国史についても、ぶっちゃけ年表を覚えろ、というような教育しかされないので、「これを知っててどうすんだ」と、学生時代ずっと言ってましたが、
それぞれ、どんな人が政治を担っていて、その人の思惑や理想や、周囲の人間や国との関係を交えて、
先人たちが何を思い国を作ってきたのかを考える大切な時間であってよいはずです。
何年に何があったかなんていうのはそれ自体はどうだっていいことのはず。

この本で、ケネディ?だったかどなたか忘れましたが
ある大統領が、「ローマ帝国の繁栄とその没落」に学び、方針を決めた、みたいな表現がありました。

その方針の評価はおいておき、そもそも歴史を学ぶ一番の理由はそこだと思う。



…話がずれました。
そんなわけで、そういう戦後史や政治、官僚、外交といった、「最も(多くの人間が)まともな教育をされていない」分野に切り込んだ本です。

ウラをとったわけでもないし、そんな分野のことなど露も知らない私が、「この本が真実である!」と言うことは出来ないし、100%信用して孫崎派普及活動をするわけでもありませんが、かなり外交・政治的な視点で物事が見える訓練になります。
そういう意味で、「中身が正しい!」と謳うより、
「これくらいの視点を民主政治である今、みなが見につけるべき」という重要な本になりますね。


近隣の各高校に50冊ずつプレゼントしたいくらいですね。
(でも、「考える」という視点を損なわないため、この本と対等関係にありそうな本を同等レベルでセットにして渡したいところですな)