バッド・ジーニアス 危険な天才たち

image 映画, social 社会

ずっと観たいと思っていた作品。

想像以上によすぎて、まさかの涙するという事態に。。

全力でおすすめしたい。



天才高校生たちのカンニング・サスペンス

タイの学生が集団でカンニングを目論むという、なんともジャンル分けし辛い映画。
どうやら「クライムドラマ」「クライム・サスペンス」に分類できるようです。

タイ歴史市場歴代NO.1ヒット!
タイ・アカデミー賞 史上最多12部門受賞

ということで本国で大絶賛されているというのも気になるところだし、
テーマが「天才たちのカンニング」という新鮮さにワクワクしませんか。
「高校生版オーシャンズ11」という呼び名は観終わってから目にしましたが、いやいや、正直「オーシャンズ11」よりもずっとリアルでスリリング。
オーシャンズ11だと聞いていたらむしろ観ていないかもしれません。

オーシャンズシリーズって、クライムサスペンスとしてはドキドキして面白いけど、基本的に才能豊かな仲間とミッションを遂行するというところにワクワクがあるものであって、あれって「犯罪」に対する背徳感や葛藤ってほとんど描かれないですよね。
「犯罪は悪いこと」どころか、組織的な盗みってちょっとカッコイイ、とまで思われかねない演出じゃないですか。

でもバッド・ジーニアスは違う。
家庭、家庭の経済レベル、学校、試験、そういう狭い世界で生き抜かなくてはならないという学生たちの切実な世界が描かれる。
実力を生かして大人のように好き勝手に生きる事ができないのが子供という立場。
その閉塞感を、主人公であるリンとバンク、さらに首謀メンバーであるグレースとパットの関係でものすごく上手く描き出しています。
彼らだからこそ、「カンニング」という、くだらないけど人生をかけた犯罪にスリルと切望があるのです。


演出やカメラワークもめちゃくちゃおしゃれ。
同じテーマを渡されて、こんな演出ができる邦画はあるのでしょうか…

さらに俳優陣、完璧すぎる。
キャラクターと顔面が完全に一致しているのも本当にすごいし、演技ももちろんですが、主役のリンはまさかの演技初挑戦でこれですよ。
やばすぎます。

リンとバンクの関係

脚本家すごい。俳優もすごい。

主人公である天才女子高生、リン。
そして同じ奨学生でありリンと渡り合える天才男子高校生、バンク。(※真面目系イケメン)

二人は努力で天才になったタイプであり、どちらも片親で、そして裕福ではない。
決してすすんでカンニングしようなんていう性格でもないけれど、「大人だって汚いことをしている」ことを知り、そして家庭環境も相まって組織的なカンニングに手を染めてしまう。

二人は文字通り「ライバル」であり「共犯」であり「運命共同体」なのですよね。
お互いがものすごく憎くて仕方なくて、だけど最も気持ちがわかるのはお互いしかいない、という。
シドニーでバンクがリンに謝るシーン、身が悶ます……。
ねぇ~~~~演技うますぎない?!(泣)


天才をテーマにした作品で「もう一人、ライバル格である天才を持ってくる」というのはよくある手法かと思いますが、ここまでヒヤヒヤさせられる関係を描けるとは。
学生だからというのもあるのかもしれませんが、いい大人が色々目論んでお互いに闇落ちしてしまう…ていうのとはまた違った感覚になりました。


ただ1点、最後バンクが文字通り闇落ちしたところで終わってしまうので、ぜひバンクも「本当はこんなことしたくない」と更正することを示唆するシーンを入れてほしかったなぁ…と、そこだけが残念な気持ちになりました。

(もう一つ疑問で言うと、リンが空港から帰ってきたときパパに対して「話があるの」と言っていたので全部打ち明けたのかと思いましたが、その後バンクが「父親にも全てがバレるぞ」と脅しをかけていたのがちょっと不思議でした。カンニングの話でないのなら、どんな「話」を打ち明けたんだろうか…?)


パットとグレースについては、グレースそもそもデザインスキル高すぎだし、パットも人をまとめる才能あるんじゃないの?
そういう才能を活かして活躍できる未来、というのを子供に対して許容できない「学歴至上主義」のリアルもしっかり描いてあると思います。


ただただスリルがあって面白い!というだけではない、何重にも深みのある映画です。
おすすめ!

バッド・ジーニアス 危険な天才たち 
CHALARD GAMES GOENG/BAD GENIUS(2017)
監督 ナタウット・プーンピリヤ