柏木 惠子 / 子どもが育つ条件

2020-01-28psychology 心理学, social 社会

発達心理学に興味があったのでamazonでポチリ。

これはぜひ男性に読んでほしいですね。
もちろん、女性もおすすめです。

「おとなが育つ条件」も購入済みなので後日レビュー。
→ レビューしました。


「育児は女がするべき」が生む現代子育ての歪み

最初から最後まで発達心理学の話かとおもいきや、紙面の6割以上を割いているのは「育児は女がするべき(男は育児より仕事)」という価値観がもたらす歪みについてです。

そしてその歪みは、「子どもが育つ」環境に良くない影響を与えやすいよ、ということが後半で書かれています。

でも短絡的に「なんだよ、また『男も家事をやれ』っていう男に文句言う系の話か。耳たこだよ」と思うことなかれ、、、

終盤は、「男性より女性のほうが総労働時間は長いのに、過労死で女性が亡くなるってほとんどない。」という衝撃的なデータを用いつつ、
男性は、「(家庭は女に任せて)稼ぐのが男のあるべき姿だ」と、精神的に追い詰めすぎてない?という警告もしています。
(まあ、過労死の男性が既婚であるかどうかのデータは確か出てないけどね。)

世の中はもうかなりフラットになってきてるんだから、「男は稼ぐことで家族を支えるんだ」という固定観念に囚われて自滅しないでね。

少々金銭的に厳しくなっても、一緒に食事をして、一緒にリビングで会話をすることが、子どもの成長にもいいかもしれないよ……

「子育てが嫌」なのではなく「自分の将来が不安」

「三歳までは母の手で」と言われることもある。
結婚・出産を期に女性が退職をする / パートなどの働き方をするパターンが多い。

その中で、

家電により家事も楽になって「家族総出でしなくてはいけない」こともほとんど無くなった。
料理や裁縫など、昔はそれなりに知識や訓練が必要だった仕事も、機械化や様々な食品やサービスなどで価値が下がった。
寿命は伸び、老後を何十年と生きる時代になった。
機械化などにより、体力勝負ではない仕事が相対的に増えた。
妊娠をコントロールできるようになり、子どもは「授かるもの」ではなく「つくるもの」になった。

そしてなにより、「自らが成長していること」が、おとなの幸福感に重要であるということがわかってきた。

かつては成長・発達といえば子どもの問題であり、おとなになるまでが発達だと考えられてきました。
しかし最近の研究は人間の能力は発達しつづけ、しかも、それが人の充実感や幸福感の源泉であることを明らかにしています。
育児と子ども相手だけの生活が、とかく母親を不安に陥らせるのは、このようなおとなとしての成長・発達の機会から疎外されているからです。
現代の女は面倒なことが嫌で気が強くて不平不満ばっかり言っているわけではない。

上記のような環境的な理由で、女性は、「誰かのお母さん」「誰かの奥さん」としてご近所と一緒になって子育てをして夫をケアして、家庭を精一杯支えることに幸せを感じて適齢期で亡くなる、
というモデルが遂行できなくなってきた。

単純に、世の中の状況が変わったから、それにともなって価値観も変わった、という至極当然の話。

そんな時代の女性が、「女は家事育児」という昔ながらの概念に囚われて家庭内で孤立し、育児不安を抱えるのも頷ける。

序盤のアンケートの紹介で象徴的なのが、ここです。
第一の育児・子どもがらみの焦燥や不安よりも、第二の現在の自分についての心理的ストレスの方が、遥かに強いのです。
育児不安というよりも、「現在の自分のような生活をしていて、自分の人生はこれでいいのだろうか」といった、母親としてだけではなく一人のおとなとして、個人としてのアイデンティティをめぐる不安や焦燥と言えるでしょう。
育児に関する不安や不満を吐露したら「母親なんだから自分自分言ってないで、子供のことを第一に考えて頑張りなさい」とか言われることが、的外れどころか一番逆効果なわけですね。

子どもは「自ら育ち」ます

「意図的に作った」子どもを「自分のもちもの」的感覚で入れ込んだり、色々なプレッシャーから極端な教育ママ(パパ)になったり、このまっさらで未熟な生物を自分たちの手で最高の作品に創りあげねば、みたいな「育る」感覚の人いるけど、

あなた方が思っている以上に子どもは創造的で積極的で、非常に多くのことを自ら学び取っていくことができる。

それに、生まれながらに個性もある。
だから、何かは他の子より遅いこともあれば、珍しい視点で才能を発揮したりもする。
すべてをゼロから自分たちの思いのままの大人を創造しようと考えることに無理がある。

ただ、それをよりスムーズに理想的に歩んで行ってもらうための心がけは必要。

それについては「正解」なんて無いけど、具体的にはいくつか例が出てます。

家事は「ワーク」

家事は生きるために必須の「ワーク」であって、「ライフ」じゃありません。

その通り!!

以下、その他気になった箇所をピックしていきます。

子どもに対する父親と母親の感情を比較してみますと、母親よりも父親の方が「子どもは自分の分身」だと思っているのです。
しかも育児しない父親ほどその気持が強いのです。
いやああああ。
「子どもの世話を具体的にして育児の大変さを知れば、子どもは分身とか可愛いだけではすまなくなることを示唆」だそうです。

この直前に、実際に休みを取得してちゃんと育児をした父親が「誰からも認められる感じがしない」「大人と話したい」「自分の人生これでいいのか考えちゃう」「ベランダから落としちゃおうかと」といった男性の体験談が出てきたのを受けてますね。


父親になるが父親をしない、父親はいるが実際の育児に参加しない───こうした育児状況は日本の特徴です。
上手いこと言いますね………。

男親が女親と違うのではなく、養育の第一責任者か二番手かが子どもへの行動や態度を決定している
「女の方が育児に適している(男は敵わない)」のは本当かという話。
確かに母乳は母親だけだけど、それ以外ってたぶん全く無いよという結論。


子どもに問題が生じると、親のしつけに問題があるのではないか、と考えるのが通例です。(中略)
むしろ親たちの関係、すなわち父親と母親がどのように生きているか、夫婦としてどのような関係なのか、うまくいっているか否かなどが、年長になるほど子どもの問題行動の背景となっているケースが少なくないのです。
この辺りは、これを専門に研究してる人もいるだろうし、本も出ていそう。
単純に両親が不仲だと、機能不全家庭ってことでアダルトチルドレンになりやすい、と一般論っぽくもいえますね。

もう凍てついた関係で、しかも子どもがいうこと聞かなくて、さらに夫婦で喧嘩になるとかいう家庭は、よく考えたいところ。
どうしても合わないなら、むしろ離婚したほうが子どものためにもなるかもよと書いてあります。

人はなにごとかを達成したいとか、より良い成果を上げたいといった動機づけ(達成動機づけ)を持っています。(中略)
人の行動を方向づけるものに、他者と親しい関係を持ちたいという親和動機付けがあります。
この二つは概ね独立の動機です。
ところが、日本では二つが正相関しており
分かりやすい表現ですね。
非常に他者との調和を重視するんですと。
ここでは、それが「お母さんが怒るから」「親が喜ぶから」という、見方によっては非常に素直な動機づけを持つ子どもが多いこと、そして、それは短期的にはいいかもしれないけど、長期的に問題なんじゃないか?と警告が出ています。

70歳以上で現在、健康な男性の74%は、自分が寝たきりになったときの介護は妻を当てにしており、一方、夫を当てにする妻の方は30%にすぎません。
こわいですね………。
まあ、女性に関しては「男が先に死ぬから」っていう理由が大きい気がしますけど、それにしたってちょっとこわいですこの数字。

「もう一度結婚するとしたら誰とするか」の問いに、中高年男性・夫の71%はいまの妻を選びますが、女性・妻で今の夫と回答するのは43%に過ぎません。
ぎゃあああああ
これどちらも、西暦2000年前後の調査です。

もうどっからどう見ても「家庭を守り、自分を献身的に支えてくれた妻(そしてつまりこれからもそうだろう)」の株が、結婚当初より上がってる男性に比較して、「確かに稼いではくれたけど、家庭や私を顧みず仕事ばっかりして家政婦扱いして、退職後もまだ世話してくれて当然と言う夫」の株大暴落の女性の図が出てるので要チェックです。

ほんと他人事じゃないよ!熟年離婚!


家族生活には三種のケアがあります。
家族全員のための家事、子どもが誕生した後の育児、それと夫と妻の間の心身のケアです。
ここでは、この三番目のケアなんかは特に「役割分担」とかじゃなく、人と人との関わりあいなんだから、対等になるべき。
でも、なぜかこれが「妻からのケアの方が圧倒的に多い」どころか、夫からのコミュニケーションは「威圧」「無視・回避」が強いという調査結果もある。
これを「男と女はそんなもん」思うのか、「対等な人間同士のコミュニケーションとしてありえない」と思うのか、、、、、、、


人身事故につながる現業で、厳密に時間管理が行われ、心身の休養が義務化されている
長時間労働(残業)しても効率悪いでしょ?意味あんの?ん?という話。
この引用すごくいいですね。
食品だってITだって建設だって「命に直結する」わけですからね。



以上。

正直、読みやすさや量的に、論文とかを全部列挙するわけにはいかなかったのか、結論が尚早に感じた箇所も多かったです。

自分は「生ける屍の結末」や「あなたの人生の科学」も読んだ後だったから頷きやすい箇所が多かったけど、そういう発達心理学系の予備知識が無いままいきなり初見でこれを読んでしっくりくるのかしら?
気になる。

砕いた表現で書いてあるし、同じような話が随所に繰り返し出てくるので読みやすいですけどね。