荒牧 伸志 / APPLESEED

2019-04-20邦画, science - fiction SF

士郎正宗原作ということで気になっていた作品。

士郎正宗さんといいえば、「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」の原作者として有名な方ですね。
GHOST IN THE SHELL(劇場版)は数え切れないくらい観てるどころか、BGM代わりに聞いている始末です(笑)



まさかの恋愛映画

そう!
士郎正宗原作というだけでゴリゴリのハードSFだと勝手に思っていました。ビジュアルから「戦闘」「戦争」「機械や兵器」を想起でき、そういう意味でもマッチョな感じがします。

しかし観終わってみると「ハードSFの顔した恋愛映画」!

ネットに落ちてるレビューなどを読むと、やはり原作とは違うらしい。
だよね…、原作は原作としていつか読みたい。

…ただ、この恋愛映画、めっちゃ良いのです。


GHOST IN THE SHELLと比較したSF描写

まずSF要素。
「人類とバイオロイドの共存が、より進化した新人類世界を作り出すか?」というテーマ。

このへんは「どこからどこまでが自我でありヒトなのか」を問うGHOST IN THE SHELL(劇場版)と似ていますね。

ハードSFでも鉄板テーマです。
むしろそれこそがハードSFなんじゃなかろうか。

ただし、GHOST IN THE SHELLが「一人ひとりの自分視点」でそのテーマに向き合うのに対し、APPLESEEDはもっと大局的。
たとえば、GHOST IN THE SHELLの素子が「さっきの人形、私に似てなかった?」と、自分の存在を疑うのに対し、APPLESEEDのデュナンにはそういう類いの葛藤が見られません。ブリアレオスのサイボーグ化を受け入れていたり、バイオロイドのヒトミとの仲の良さだったり、それをナチュラルに受け入れている印象。
逆に、APPLESEEDでは人類とバイオロイドの共存は是か否かという議論が社会的に起こる様子を描くのに対し、GHOST IN THE SHELLではその葛藤に苛まれているのは主に素子だけに見える。
APPLESEEDは「人類としてどこを目指すか」を社会的、俯瞰的に描こうとしている感じですね。

どちらもそれぞれの面白味がありますが、他人事として軽い気持ちで見やすいのはAPPLESEED。
難しい言い回しとかが少なく分かりやすいというのもあります。

恋愛映画でもあるわけで、娯楽映画としてはこちらのほうが優秀(ウケる)と思います。


キャラとその配置

どうやら士郎さんは「キャラ配置」が上手い。
GHOST IN THE SHELLやSTAND ALONE COMPLEXを見ていても、キャラクターの性格は原作と多少変わったとしても、素子やバトー、荒巻はもちろん、9課という括りも含め、「面白いエピソードが書けそうな人物相関図」です。

APPLESEEDは拡がりとしては狭くなりますが、「生身でめちゃくちゃ強い美系のデュナン♀ ✕ サイボーグ化した恋人ブリアレオス♂」。
これだけで、二次創作できそうじゃない?(笑)。

面白い作品って、人物相関図見るだけでなんとなくワクワクするよね。
この「二次創作できそうな感じ」が、「原作とは違うけど、これはこれで面白い」劇場版を作り出してしまうのでしょう。


映像技術

2004年公開、フルポリゴンのアニメタッチ映画としては初?で騒がれたようですね。

10年後の2014年にリブート版「APPLESEED Alpha」という作品ではさらに写実的になっているらしい。
こちらも観たい。

最初は戦闘シーン。
ここは結構長いのですよ。15分くらいかな?ずっと戦闘シーンです。
機械や廃墟、爆撃などの戦闘シーンではさすが、CGだからこそという感じ。
デュナンの強さと、ポリゴン技術を見せつけたシーンとしていい演出です。

ヒトミが登場すると、今の感覚としては、人物描写はこんなもんかと少々がっくり来ます。
続いてオリュンポスでヒトミと移動中に襲われるあたりまでは、この時代のポリゴン特有のカクカクさや不自然な滑らかさが気になりました。
でも物語が展開していくにつれて、それはほとんど気にならなくなってきます。

後半、多脚砲台を止めるための戦闘シーンはとくに疾走感があって◎。

機械モノが好きな人も、SFが好きな人も、楽しめるんじゃないでしょうかね。

さーて、APPLESEED Alpha、いつ観ようかな。