西岡 常一, 小川 三夫, 塩野 米松 / 木のいのち木のこころ

2015-05-09お気に入り・おすすめ, 味わい本(じっくり読みたい), social 社会, self-dev 自己啓発/リーダーシップ, non-fiction ノンフィクション

木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)
昨年暮れ、知人に教えてもらった本。

人に本や映画をゴリ押しされるのは好きじゃないのだけど、
縁があって「あなたが言うなら」と、素直に受け止め即座に本屋へ。

「天」を読んで、「地」あたりで結構止めてしまっていたのだけど、この度読了。
とっても素敵で大切な内容だったので、これはじっくり読むものだなと。



大切なことを身に付けるには、時間がかかる

ということを、全編とおして非常に感じました。

どんなに「これが真理だ!」と言われる言葉を羅列しても、本当の意味で理解は出来ないし、身につかない。

効率化と声高に歌われていても、経験と時間をかけて、学び取って行くべきこともある。

西岡さんの独特な語り口調で、今の若い世代ではあまり経験が無い人が多いと思われる「頑固親父のありがた迷惑な説教」をじっくり聞かせて頂いている気分になります。
後半はその弟子である小川さんに引き継がれ、世代を超えて未来を想像させる、非常に素敵な本です。


さて、以下は自分のまとめ。

【ポイント】
  • 木には癖があり、それを見抜き活かすことが大切
  • ↑人に対してもまったく同じことが言える
  • 効率ばかりを考えたことはいいことだとは限らない
  • 分析は大切だけど、実際に見聞きしたり体験をしていない学者は、職人より立場が上という事はない(むしろ逆だと思っているくらいのほうがいい)
  • 圧倒的にすべての技術の基礎となる技術(ここでは「研ぎ」)は、頭で考えるのではなく、とにかく練習しまくって体に叩き込むしかない
  • 途中から入ってきた奴は、「ゼロから」ではなく、すでに何らかの癖があるため「マイナスから」


「おもかげ復元師」のところでもチラッと書いたけど、「定義しても意味の無いもの」「時間がかかるもの」が、実際はとても大切なんじゃないか、って、明文化して捉えられるようになったのは、今年の春にはこの本の「天」を読んでいたからじゃないかと思う。

物事を論理的に説明できる(状況までクリアになっている)、というのは、ものすごく理解や整理の助けになる。
それに、論理がクリア=他人に対して汎用性がある、という事だと思うので、とても大切なこと。

だけど、「それだけ」をインスタントに伝達しても、実は最も大切なところが伝わったり「理解」になっていないことってあるんだなと強く感じた。
それは、伝え手と聞き手の態度や状況やタイミングなど、とにかく「当事者達自身のせいで伝わりきらないことがある」のだと思っていたのだけど、それがすべてではないのかもと。

やっぱり、 体験 と 言葉 は違うんだなと。

やらなきゃわからないことってあるんだなと。

(そういえば似てる言葉に「やってみないとわからない」があるけど、これは、未来は不確実だ、という意味なのでここではまったく違う)

「天」は、「ハハァ、効率ばかり気にしていても見えないことはあるのだな。時間をかける、ってそれだけだと“非効率でよくない”ことみたいに言われて育ってきたけど、そんなこともないんだな」って思ったくらいだったけど、とくに「地」にかけて、教育の話を読んでいて強くそう感じた。

全体通してのポイントはそこに集約される気がしているのだけど、それこそ「「これが大切なことです」って一文を読むんじゃなく、これだけの文字列を時間をかけて読んだから真意が懐に落ちてきた」んじゃないかなと。


ITと宮大工

私は現職はIT業界だけど、なんとなーく「宮大工の世界とは正反対っぽい雰囲気だよな」と、思いながらずっと読んでいた。

比べると、IT業界は、伝統的(古くからの集積された知恵)な技術がそもそも無いといえるかな。

もちろん、時代に合わせて新しく考えていき続けなくてはいけないってのは、きっとどんな分野もまったく同じなんだろうけど、特にITは「応用していく」段階にすらなっていないような気がする。
みんながみんな大海の上で「いかに沈まない船を作れるか」ってもがき続けている感じ。
一部のセンスのある人達はどんどん先頭を突っ走っていくのだけど、次々技術進歩があるから、普通の人はあっぷあっぷ。
少し上の人が技術を身につけたと思っても、すぐに下の世代では新しい技術が台頭してるわけで、「じっくり技術を教え込む」とか「先輩の姿を見て少しずつ身につけていく」とかそれ自体が難しい。
一部の頭のいい人たちの層が少しずつそれを大きくしたり発展させたりまとめたりして、今後「応用への基礎」が形作られていくと思うんだよね。

とにかく、「効率化ばかりに目が行って、なかなか定義や規則だけでは伝承できない大切なことがある」って感じることが出来てとってもよかった。
ぜんぜん業界の状態は違うけど、人と仕事をしていく上で、大切なエッセンスをひとつ学んだと思います。