こうの史代 / この世界の片隅に(後編)
前編はこちら。
前編は18年12月から。
後編は19年12月から。
20年になってくると終戦に向かってどんどん生活が厳しくなっていきますし、8月の描写が入ってきますので前編と比べてかなり重めです。
戦時中の生活やなんかを細かく描写している点は前編から変わらず素晴らしい点です。
前編を読んでいると、主人公であるすずは、とても芯が強い人として描かれているように見えるのですが、
なんと、後編では、すずが一番弱い人間に見える描き方になっています。(と私は思う。)
これが個人的には一番びっくりでした。
「周囲にはこんなふうに壊れていく人がいて、主人公も負けそうになるけど、それでも心を強く持つ」というのをフォーカスする場合が多いと思うのですが、この作品はむしろ逆ですね。
すずもとても強いんだけど、「壊れかかる人」としてちゃんと描かれているのはすずだけです。
終戦を知った時、「最後の1人まで戦うんじゃなかったの?!」と興奮するのも、すずです。
自分だってそこに生きていたら、同じように弱く、そして周囲は強いのにとさらに自己嫌悪に陥ったりするんだろうかと、主人公が弱いからこそ入り込めるところもあるのでは。
まあ、詳しく心理描写されてないだけかもしれないけど、周囲の人達、とっても強く優しいです。
人に助けられて生きていくし、それはお互い様なんだなと強く感じる作品でした。
ちなみに一番、さすがだなと思ったのはやっぱり周作さんですかね。
前編読んだ時、「周作さんが亡くなって自暴自棄になりかけるすず」というありがちな展開を少し懸念しておりましたが、これは裏切っていただきました。よかった~~~。
身も心もただのイケメンですこの人は。
夫を励ますすず、というより、すずをちゃんと支える夫、という描写が多いです。
というかピンチに現れすぎです!!ww
次点で、実家にいる妹のすみちゃん。
別居してるから出てくる回数は少ないんだけど、両親の死について取り乱さずに報告する姿とか、終戦後訪ねてきたすずが「早く来れなくてごめん」と言うのに対し、「早くこなくてよかったよ」(原爆の後遺症を匂わせる描写)と答える強さとか。
そして、やっぱりお義姉さん(径子さん)ですかね。
最後の方でねえさんの語りがあるけど、恋愛結婚で愛していた夫に早く先立たれて、息子と生き別れ、娘を亡くし、、と、例に漏れずこの人だって辛い立場。
つい、すずを責めますが、実家に帰るというすずへのあの語りは素敵でした。
「大切なあの人は、あの言葉を残し、今はどこでどうしているのだろう。」という、平和ゆえに人が死なず、連絡手段も豊富な今では考えられない切ない感情が当時は誰しもが持つものだったのだなと思います。
この感情自体は水原さんでなくてもなのですが、互いに淡い恋心を持った、自らの生活には相容れない人、という絶妙なポジションでそれを強調しました。
同時に周作さんへの愛も感じれてよかったです。
それからリンさん、この人まさか「座敷わらし」の人……???
なんということだよ。。
後編のカバーイラストにもなっている、桜の木に二人で登るところ、とっても素敵でした。
周作さんとも最後に一目、会えて良かったですね。
丁寧に暮らすことや「まともでいる」ことの大切さや贅沢さ、
隣人と助け合って生きていくことの素敵さ等、
戦争の悲惨さを伝えるというよりも、むしろ生きていくってこういうことだよと諭されるような作品です。
各国とのネゴが云々、政治が云々といった話ももちろん超大事と思いますが、こういうのも大事やなと思います。
おすすめです。
前編は18年12月から。
後編は19年12月から。
20年になってくると終戦に向かってどんどん生活が厳しくなっていきますし、8月の描写が入ってきますので前編と比べてかなり重めです。
戦時中の生活やなんかを細かく描写している点は前編から変わらず素晴らしい点です。
「歪んでるのはわたしだ」
これは20年6月、空襲で義姉の娘である晴美さんが亡くなった後の主人公の言葉。前編を読んでいると、主人公であるすずは、とても芯が強い人として描かれているように見えるのですが、
なんと、後編では、すずが一番弱い人間に見える描き方になっています。(と私は思う。)
これが個人的には一番びっくりでした。
「周囲にはこんなふうに壊れていく人がいて、主人公も負けそうになるけど、それでも心を強く持つ」というのをフォーカスする場合が多いと思うのですが、この作品はむしろ逆ですね。
すずもとても強いんだけど、「壊れかかる人」としてちゃんと描かれているのはすずだけです。
終戦を知った時、「最後の1人まで戦うんじゃなかったの?!」と興奮するのも、すずです。
自分だってそこに生きていたら、同じように弱く、そして周囲は強いのにとさらに自己嫌悪に陥ったりするんだろうかと、主人公が弱いからこそ入り込めるところもあるのでは。
まあ、詳しく心理描写されてないだけかもしれないけど、周囲の人達、とっても強く優しいです。
人に助けられて生きていくし、それはお互い様なんだなと強く感じる作品でした。
ちなみに一番、さすがだなと思ったのはやっぱり周作さんですかね。
前編読んだ時、「周作さんが亡くなって自暴自棄になりかけるすず」というありがちな展開を少し懸念しておりましたが、これは裏切っていただきました。よかった~~~。
身も心もただのイケメンですこの人は。
夫を励ますすず、というより、すずをちゃんと支える夫、という描写が多いです。
というかピンチに現れすぎです!!ww
次点で、実家にいる妹のすみちゃん。
別居してるから出てくる回数は少ないんだけど、両親の死について取り乱さずに報告する姿とか、終戦後訪ねてきたすずが「早く来れなくてごめん」と言うのに対し、「早くこなくてよかったよ」(原爆の後遺症を匂わせる描写)と答える強さとか。
そして、やっぱりお義姉さん(径子さん)ですかね。
最後の方でねえさんの語りがあるけど、恋愛結婚で愛していた夫に早く先立たれて、息子と生き別れ、娘を亡くし、、と、例に漏れずこの人だって辛い立場。
つい、すずを責めますが、実家に帰るというすずへのあの語りは素敵でした。
リンさんと水原さん
さて、前編で、スパイスであるリンさん、それから絶対邂逅があると踏んでいた水原さんでしたが、後編のしょっぱな1ページ目から水原さんが登場して笑ってしまいました。w「大切なあの人は、あの言葉を残し、今はどこでどうしているのだろう。」という、平和ゆえに人が死なず、連絡手段も豊富な今では考えられない切ない感情が当時は誰しもが持つものだったのだなと思います。
この感情自体は水原さんでなくてもなのですが、互いに淡い恋心を持った、自らの生活には相容れない人、という絶妙なポジションでそれを強調しました。
同時に周作さんへの愛も感じれてよかったです。
それからリンさん、この人まさか「座敷わらし」の人……???
なんということだよ。。
後編のカバーイラストにもなっている、桜の木に二人で登るところ、とっても素敵でした。
周作さんとも最後に一目、会えて良かったですね。
「戦争の悲惨さ」ではなく「生きるということ」
生きていることの価値や、丁寧に暮らすことや「まともでいる」ことの大切さや贅沢さ、
隣人と助け合って生きていくことの素敵さ等、
戦争の悲惨さを伝えるというよりも、むしろ生きていくってこういうことだよと諭されるような作品です。
各国とのネゴが云々、政治が云々といった話ももちろん超大事と思いますが、こういうのも大事やなと思います。
おすすめです。