原田マハ / 本日は、お日柄もよく

2017-04-29クイック本(さくっと読める), novel 小説

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

疲れてるときに、さくっと泣ける作品を読みたくなって購入。



言葉が持つパワーを書く

普通のOLが、ひょんなことから言葉の魔術師(久遠久美)に出会い、そこから「スピーチライター」として人生が変わっていく─── そんなお仕事女子応援ストーリー。

帯に「泣ける!」と触れこみがある作品は若干の胡散臭さがありますが、立ち読みで冒頭を読んだとき、嫌味がない文体で、これならイケルな、と。

主人公である「こと葉」が、片思いしていた幼馴染の結婚式でスープに顔を突っ込む という衝撃のエピソードからはじまります。
そして「スピーチライター」への出会い、ワダカマという人物、幼馴染の出馬(?!)、、、と、物語がトントンと展開していきます。

いくつかスピーチが出てくるので、「ウマイな~」と膝をたたきながら読めます。
主人公と一緒になって「言葉が持つパワー」を実感できるはず。

「OLが頑張るお仕事小説」という触れ込みから、ありがちなほんわかストーリーかと思いきや、全くそんなことはありません。

まさかの、片思いの相手だった幼馴染の「あっくん」が野党候補で出馬し、
なぜか選挙活動を仕事をやめてまで手伝い(スピーチライターとして)、
政権交代という日本を動かす大事件に大きく関わることに…
さらに、敵方に、ライバルであり想い人でもある「ワダカマ」が与党側で参戦!!

・・・という、かなりスケールが大きな展開になっていきます。

政治の話が出てきますが、小難しい話は一切なし。
政治素人の主人公目線で読めるのでわかりやすく、
そして「演説」をぜひ次は真面目に聞いてみよう、と思ってしまうこと必至です。

物語そのものも、選挙の下りも、現実味はあまりありませんが、ドキドキ感があってかなり面白いです。

登場人物や展開が少女漫画

「現実味はあまりない」と書いたとおり、エピソード一つ一つとっても、キャラクターをとっても、少々、少女漫画っぽいです。

一つ一つのエピソードがさくさく進んで、あまり細かな心理描写や状況描写をしていません。
(なので、非常に読みやすいわけなのですが)

加えて、登場人物がメッチャいい人ばかり。
だから、少女漫画を読んでいる気分になるのです(笑)

例えば話の起こりで重要な役割を果たす、こと葉の親友の「千華」、めちゃくちゃいい子です。
少女漫画にありがちな、「なぜか主人公のことが大好きで、主人公を都合よく助けてくれる、主人公の親友」のポジションです。(笑)

それからあっくんのお嫁さんである「恵理ちゃん」。
この子も、めちゃくちゃいい子です。
可愛らしくて、真面目で素直で、人のことを考えられるし、命をかけて子供を守る気概もあるし……
「そんな天使みたいな女子、いるかなー!?」と言いたくなるような「中盤のキーマンとなる、メッチャ良いサブキャラ」です(笑)

さらに「おばあちゃん」。
「実はすごい人だった系おばあちゃん」ですね。
サマーウォーズ」に出てくるカリスマおばあちゃんと似ています。

そしてなんといっても「ワダカマ」!!!!
ライバルであり主人公の想い人である、という重要人物。
「ちょっと嫌味なやつで、なぜだか反発心を持ってしまうのだけれど、それは彼の本当は優しいところや、才能に実は惹かれているから…」的な、少女漫画ど真ん中の設定。
彼は最後まで「少女漫画に出てくる相手役」を演じきってくれました…。
当然、最後はいい感じになりますが、「ワダカマがなぜこと葉に惹かれたのか」は、まあ分かるけど、、でも、分からなかった…w

ついでに言うと主人公の「こと葉」も、いわゆる「実はすごい家系(潜在能力の持ち主)だった系主人公」です。
少年漫画だと「実はスゲー人の息子」「偉人の生まれ変わり」とか「実は超人的な能力を秘めている天才だった」的な設定がありがち。
こと葉は、おばあちゃんがかなり有名な俳句作家で、家族同然に過ごしてきたあっくんのお父さんは有名な政治家、そして自分には、プロに一発で見定められてしまうような文才があった…。

なにこのチート設定・・・ww

・・・というわけで、
「サクサク読めて、それでもホロリとする読みやすい作品。だからこそ、スピード感があり、キャラクターもわかりやすくて、ドラマにしたら絶対面白くなる、脚本的小説」
という感じでしょうかね。

と思っていたら、来年ドラマ化するらしいです!

ワダカマを誰が演じるのか!? 期待。

荻原浩さんにちょっと似ている

この軽めの文体とスピード感、そしてちょっとホロリとする感じは、荻原さんに似ています。

荻原さんもいくつかドラマ化してますので、「ドラマにし易い」作品としても似ているかもしれません。

ただ、荻原さんの場合は「非・王道テーマ」を、結構人物描写をしっかり入れて書くのですよね。

どちらが良い悪いではありませんが、原田マハさんは「王道テーマを面白く書ける」人なんじゃないでしょうかね。

言葉の持つ力を感じる事のできる素晴らしいテーマと、
さくさく読めるわかりやすい文章、
ちょっと疲れた仕事帰りに読むのにほんとにピッタリです。

また読み返そうかな。

で、また疲れた時はマハさんの別作品も読みたいと思います。