伊丹十三 / ミンボーの女

2020-07-20邦画, social 社会

ミンボーの女 [DVD]
「しんがり 山一證券 最後の12人」より。

伊丹十三氏の作品は初めてまともに観ました。


スカッとする社会派名作

1992年に公開で主演は宮本信子。
しんがり」を読んでいて、チラッと出てきたので気になって観ました。

内容は重い、というかヤクザのゆすりと向き合うという内容なので脅しの場面などコワイ内容が多いのですが、最初からBGMも軽快でギャグを挟みつつ、さくさく進みます。
お決まりのギャグは、わかってるけどクスリとしてしまう。非常に観やすい。

そして、なんといっても「原作がある作品」じゃなく、映画用に考案されて監督自ら脚本を作られているので、無駄な要素が一切なく、きれいにまとまった内容になってます。

舞台となるのは、ヤクザに目をつけられている大手ホテル。
ヤクザに負けっぱなしで責任を押し付けあっていた重役や弱気な社員たちが、「ミンボーの女」の登場により、ヤクザと向き合っていくうちに団結し、ピンチを乗り越えて毅然と追い返すまでになる…。

いい雰囲気になってきた矢先の窮地、そしてミンボーの女の過去、「絶対手は出してこない」への裏切り、「『突き出し』を活かしてみないか」の回収、やられっぱなしだった社長のダメ押し、という各要素の配置も素晴らしい。

ありがちな「謎の恋愛要素」「(ストーリーには不要な)カワイコちゃんキャラ」みたいな要素も一切なくて本当に観ていてスカッとします。

ヤクザも臨場感があって普通にコワイです。。
子どもには見せたくない映画だね。

ふと「OL忠臣蔵」を思い出しました。90年代の名作って面白いなぁ。
90年代=子供時代であり、その当時はよくわからなかった話を、大人になった今振り返るのは、今の世の中を知るためにも非常に勉強になると感じてます。

いま、映画に命をかける監督がどれくらいいるのか

Wikipediaを読んだら、
公開された直後の5月22日、監督の伊丹が自宅近くで刃物を持った五人組に襲撃され、顔などに全治3ヶ月の重傷を負う事件が起きたが、「私はくじけない。映画で自由を貫く」と宣言した。だが翌年5月30日には次の映画『大病人』の上映中、暴力団組織が劇場のスクリーンを切り裂く事件が起きた。
と書いてあって驚愕。

今は「ヤクザ」というと、「昔のもの」「古臭い映画」っぽい感じがしますが、それは当時の人達が戦った結果なのかも。

映画に命をかけろとは全く思いませんが、伊丹十三氏ってすごい人だったのだなと圧巻です。
ヒットした「原作」ありきで、あるていど集客して儲けられれば内容はなんだっていい、、と透けて見える作品もある中、このエピソードを聞くとグッとくる。

ぜひ、昭和後期に思いを馳せながら観たい作品。