ラージクマール・ヒラニ / pk

2020-10-04image 映画, social 社会

友人がDVDを貸してくれたので。

これは「素敵系」コメディ!

後半でネタバレしてます。



全てが絶妙。難しいテーマなのに。

前情報や監督・俳優について全然知らないまま観たのですが、これはイイです。

あらすじは、地球の調査のためにインドに降り立った裸の宇宙人「pk」が、母星と通信をするための「リモコン」を盗まれてしまい、それを取り返そうと奮闘する。そしてもうひとりの主人公「ジャグー」と出会い、協力していく中で思いがけず社会を巻き込んだ問題提起となり、最後には「ジャグー」自身の問題まで解決することに…。

この監督さん、そしてかなり難しい役どころの宇宙人「pk」を演じ切った「アーミル・カーン」という方は、もともと大ヒット作「そして、うまくいく」という作品でも監督と主演という形で共演していた、いわば黄金タッグらしい。
インタビューなんかも、「そして、うまくいく」を観た人が次作を期待して本作を観るだろう、という大前提で語られている。
「そして、うまくいく」は、私は観てないしあらすじも知らないので、純粋な気持ちで本作を見ることが出来てすごく良かったです。


本作は、脚本ももちろんすごくいい(≒いい話!)のですが、演出・構成含めてすごく上手いです。

「社会を巻き込んだ問題提起」の部分、一言で言えば宗教問題に切り込んでるんですよね。
監督ご本人は確かイスラム教徒だったかと思いますが、「神様や宗教を理由にして人間同士が争ったり生きづらさを生み出すなんてナンセンスじゃないかな」という感じのテーマを表現しています。

社会問題提起系の作品って、「何かを糾弾・否定・暴く」ことで「そうじゃない社会にしようよ」的なメッセージを伝えるのが一般的で、表現の仕方はどうであれ一貫して「これは良くないよね?」「そうじゃないとこんなに悲しい酷いことが!」と表現するだけなので割とやりやすいと思うんですよ。

でも本作は「宗教」ですから。そして別に「宗教そのもの」や「神様の存在」を否定しているわけでもない。かなりセンシティブなテーマです。
しかもジャンルは「コメディ」ですよ。このテーマで「コメディ」要素をうまく入れられるのってすごいと思うんですよね。

おそらく「社会問題提起」の方が「伝えたいメッセージ」の本筋で、それを大衆受けしやすいようにコメディにした、というのが流れだと思うし、監督のインタビューを読むと、やはりそうだったようです。そのへんはかなり意識して「説教臭くならないように」計算された脚本と演出・構成らしくて、さすがだなと。

なによりこの作品のいいところは、「説教臭くならないように、でも本当に伝えたいのは社会問題提起のほう」というのが、すごく分かりやすいんですよ。
ちょっと匂わす表現をしてあるけど、説教臭くなるのを避けて「匂わすに留める」「深く考察するの好きなタイプは察して」みたいな、意外と無責任なのって実はかなり多いと思うんですが、本作はかなり直球に表現してあるんです。「あ、監督はそれをちゃんと伝えたいんだ」ってすごくストレートに感じる。

それがめちゃくちゃいいんですよ。

これ人付き合いでも全く同じなのですが、「それっぽいことだけ言って具体的なことを言わず、自分だけ逃げられるようにした状態で、あとはあなた察してね。分からない人には通じなくても別にいいし」みたいな、一見クールでスマートだけど、超人任せというか無責任な感じの人いたら、ちょっとムカつきませんか。
もちろん、そのやり取り自体を楽しむ映画や関係性もある(例えばオマージュとか「お約束」や「様式美」とか)けどね。

本作は、「難しいけど大事なテーマを、すごく丁寧に、だけど全力で表現してますよ」ってのがストレートに伝わってくるのですごく清々しいのです。

しかも作品としては、ちゃんとラブストーリーやコメディ、インド映画にはおなじみの歌って踊るシーンとかがしっかり構成されていて、娯楽作品としても逸品。

いや~本当に上手いです。さすが世界的なヒットを生み出した監督。
「社会問題提起」の方よりも、単純に娯楽作品として他人におすすめしたいですね。むしろ社会問題提起のほうに特に何も思わなくていいから娯楽作品として楽しんで欲しい。それくらいちゃんとした娯楽コメディ作品です。

アーミル・カーンとアヌシュカ・シャルマ

ねぇねぇ、ヒロイン「ジャグー」役の「アヌシュカ・シャルマ」さん、めちゃくちゃ可愛い!!
本作ではショートカットなのですがこれはカツラで、もともとずっとセミ~ロングの方のようなのですが、すごく整った美人系キュート顔なので、ショートもめちゃくちゃ似合います。
カワイイから拾ってきた写真張っちゃう。
これがロングのアヌシュカさん(@wikipedia)。美人~~~~!!


そして本作のアヌシュカたん・・・・






かわいい・・・・・・・・・・・・・

上記の写真には偶然あんまり写ってないけど、身長175センチくらいあって、しかもおっぱいも大きめでスタイルめっちゃいい。かわいい・・・・・

アーミルさん、アヌシュカさんの演技が◎なのはもちろん。

メイキングを観ていたら、アーミル・カーン氏ご本人の役作りも本当にプロ!という感じだし(いいカラダ…)、髪型やファッションなどのキャラクターメイクを真剣にやっている構成側も本気度が伝わってきてすごくよかった。

Googleで「アーミル」検索しようとするとサジェスト第一位が「筋肉」・・・・。
そりゃそうでしょうよ・・・。いけめん・・・。



それと、メイキング観たら、監督が「めっちゃいい人」ってのがすごくにじみ出ていて・・・イイ・・・。



宮崎駿みたいな天才型の監督じゃないですよね。きっと。

たぶん、すんごく一般人と同じ感性を持ち合わせていて、センスと努力で映画に向き合っているって感じのお方です。

(※「天才型は努力してない」とは全く欠片も思ってないよ!別に努力してないやつは偉くないとも思ってないしね!)

最近みんなミュージカル慣れしてきたんじゃない?

ところで「インド映画は突然踊りだす」っていまだに言われるらしいし、インタビューにも入ってたけど、もはやみんなミュージカル映画見慣れてて、今更何も思わないでしょ?という感じ。
というか私が何も思わなかった。

ミュージカルそのものをたまに見るようになったてのもあるし、エマ・ワトソンの「美女と野獣」や日本でも大ヒットした「LA.LA.LAND」とかで、昨今のみんなは相当もう慣れてるよね。

もうな~んも違和感ない。笑

説明をこじつけようとすれば、どこかの評論家は「恋を歌ういい感じの歌に乗せて二人で踊らせれば、恋に落ちたことをわざわざ説明しなくてもいい」とか言っているようですが、別に説明省くために踊ってるわけじゃないでしょうよw
もちろんそういう面もあるのは事実とは思いますけど、いやいやそうじゃなくて、「体感、歌って踊っているときの高揚感と同じ」だから、それをストレートに表現してるだけだと。嬉しさだけでなく悲しさを表現する場合であっても、そうやって悲しさを歌って静かに揺蕩うことこそが一番そのキャラクターの心情に近い、ということかなぁと。

本作では、ジャグーが最初に恋に落ちるシーン、pkが街でやらかして追いかけられるシーン、pkが親切な「兄貴」にお世話になって仲間になるシーン、後半でジャグーとpkが一緒に踊るシーン…の、4シーンくらいだったかな?
それはしっかり覚えてます。どれもカワイイ。

「兄貴」たちと一緒に踊るシーンが一番エンド映画っぽい「突然踊りだすシーン」に近かったと思いますね。すごい愉快なシーンで見てるだけで幸せになります。笑


ちょくちょくツッコミどころがあるのがまたイイ(SF談義とその他)

さて、以下はネタバレありです。

まずpkは宇宙人というくだり。
私はSFファンで、しかもファーストコンタクト萌ゑですので、これをその目線で言ってたとしたらツッコミどころしかありませんw
主題はそこじゃないので本当に全く気にならなかったのですけど、敢えて突っ込んでみましょうかw

まず、「あんな高度な宇宙船技術を持っていて、しかも、同じ人間が住んでいて(※)、しかも宇宙服等何もなしでいきなり降り立つことが可能と分かっていながら、なぜ調査しにきたのが一人だけで、しかもあんな無策だったのか」に尽きますかねw
※作中でpkが「人間が他の場所にも住んでいるなんて知らなかった」との発言から、ほんとうの意味で同じ種族だと思われる
宇宙船技術については、「あんな大きい宇宙船が」ということだけじゃなくて、「遠い星」から来ている(※作中で、少なくとも月よりは遠い事が分かる)のが分かるのですが、ラストシーンで「1年後に再訪してくる」ということは、母星についてすぐ折り返したとしても「6ヶ月」で来れる位置です。
現在の技術で考えるなら、木星までで1年程度なので、ということは火星かそれより近いくらいじゃないと辻褄が合いません。が、その圏内に「人間と全くおんなじ人種」があんな宇宙船作るくらいの文明を築いていたら、流石に地球人だって何らかを察知してるはずですから、ということは、現在の地球の技術を軽く超える技術を持ち遥か彼方からやってきた、と考えるのが妥当でしょう。

そんな高度文明を持ち、しかも「母星がピンチだから、ヒントになるかもしれなくて調査に来た」という、母星の文明の命運をかけた一大調査なのに、無策で一人だけがポツーンと降り立つわけですよ。どゆこと??ww てか、そんな技術があるなら「リモコン」無くたって迎えに来れるだろw

というか、そんな遥か彼方に「同じ種別の生命体がいて、全く違う文明を築いている」事自体がもう、、現在の進化論では辻褄が合わないわけで…

…てか結局何を調査したの?w ラストで元気に地球に再訪しにきてるけど、母星はダイジョブなの…?w

こんな感じになります。笑


もう一つ、大きなフィクション要素として挙げられるのが、pkの「手を握ると相手の思考をトレースできる」能力。

これはまぁフィクションコメディの「ご都合主義魔法」要素なので何も思いません。「コメディのご都合主義魔法要素」というのは例えば「好きになった相手が吸血鬼」とか「キスしないと出られない部屋に閉じ込められた」とかそういうやつですね。突っ込んでも意味ないタイプの舞台装置です。
「ご都合主義魔法」はやりすぎると本当に都合が良すぎてウザいだけですが、ちゃんとこの要素だけに留めているので、「地球人とは違う」ということを表現しつつ、「まず手を握ろうとする」というコメディ要素として機能していて上手いです。

しかもこれが、後半、ジャグーの失恋(サルファラーズとの思い出)をトレースしてしまうことで、クライマックスがpkの「自分の恋を諦めるのと同時に、全てを解決に導く」という決断につながっていて、ラブコメとしてもすっごく筋が通ってるんですよ。
互いの手を握ってトレースすることでコミュニケーションを取っていたなら、本音も建前もないから「嘘がつけない」というのも納得。


あとは、電車内のシーンが妙にチープだったりとか、ジャグーの部屋広すぎね!?超絶金持ちやんけ!!とか、細かいツッコミどころも無くはないw
車内の撮影はおそらく、電車っぽい内装の偽物つくって窓の向こうの映像をハメコミにしただけっていう、AVかな?みたいな作り方してますよねあれw

でも、砂漠の機関車シーンとかはガチで走らせたっぽいし、電車以外はとにかく全力で演出してるので、ほんとうの意味での手抜きさ安っぽさチープさは全然ないんですよ。「大人数の会場」で何かをするというシーンがかなり多いのですが、あれ全シーンでエキストラを用意したのだとしたら相当すごいですよ。
pkの衣装なんかも、スタイリストが頭で考えて一式揃えたんじゃなく、街中で「pkが着そう!」みたいなの来てる人にいきなり声かけて買い取ったりして集めたらしいww 何その情熱(褒めてる)
サイズがピッタリじゃなくてピッタピタで今にもボタン飛びそう!みたいなの着てるシーンもあって、なるほどとw
作中でpkは「社内S○Xしてる人達の服を適当に持ち去って」着ていたわけなので、かなりそれに近い集め方をしたわけですよね。すごいw

・・・というわけで、ツッコミどころも無くはないけど、そんなこと全く気にならない怪作!

エヴァの系譜でたまに流行る「考察系」作品も面白いけど、頭空っぽにして楽しめる、素敵インドコメディ映画でございました。

おすすめです~~