岩崎 裕美子 / ほとんどの社員が17時に帰る─10年連続右肩上がりの会社
ごめんなさい!!ふらっと本屋で目につき、そのまま立ち読みで読了してしまいました。おすすめ。
読書速度の遅い私でも30分で立ち読みできたので、ほとんどの「組織が上手く行ってなくて困ってる中小企業経営者」はさくっと読むべきだと思います。
タイトルがいかにも「釣って」ますが、「効率よく仕事して早く帰れば、健康になるし業績も上がって幸せだよ!」という、今となってはありふれたテーマを扱う本、 ではない んです。
ちょうど今の自分の問題意識にもクリティカルヒットな内容なので、勢いでレビューします。
「定時で帰れて福利厚生が手厚ければ幸せ」なのではない
なんとこの本、中盤で「定時で帰れて業績も上がり続けている理想の会社を作ることができた」にも関わらず、その当時の「社員からのサーベイ結果は最悪だった」と書いているのです。これは、「とにかくフレキシブルな働き方を出来る空気に全員でして、ワークとライフを素晴らしいバランスで過ごすことで、いろんな問題解決だよ!!」という、最近の一辺倒な考え方に少し冷水をかける内容ですよね。
必死で頑張って頑張って、世間の常識にも社員の不満にも耐えて定時で帰れる会社を作った、、、、
でもその先に、結局真っ暗な社内が待っていた・・・・・・
社員のためにもこんなに頑張っているのに、社内から不平不満の噂ばかり聞こえる・・・
サーベイをしたら、聞きたくない「経営者への不信」が数字になってたたきつけられる・・・・
著者である岩崎さんは、終始明るめの口語体でこの本を書いているのですが、
これを突きつけられたらほとんどの人は絶望を感じると思います。
しかも、「あなた達の為をおもってやってるのに」と少なからず思っているはずですから、
「裏切られた」「結局あいつらのレベルが低いんだ」と思ってしまっても仕方ないでしょう。
岩崎さんはこの状況でも、社外のコンサルに頼るなどしながら、社内に活気を出すための糸口を見つけていきます。
(ついでに、この「社外の人間に頼る」というのは、ワンマン経営者が「出来ない」芸当の一つだと思っています。
岩崎さんは「いくつもコンサルにあたったが、なかなか糸口が見えなかった」としながらも、周囲のアドバイスを大切にしていく姿勢が、解決を引き寄せます)
本当にさくさく簡単なことのように書いてありますが、たぶん、これは物凄く大変なことなんだと思います。
その先に何がどうなっていくかはぜひ本を読んでいただくのが早いでしょう。
「理念が大事」なのではない
「理念が大事」って、いつ頃から声高に言われるようになったのでしょうか?現在、ちょうど「ビジョナリー・カンパニー」を併読していますが、そこにも挙げられているように、「企業理念」などを、なんだか抽象的かつキレイ事の羅列のような「絵に描いた餅」状態にさせてしまっている会社は非常に多いんじゃないかと感じています。
「理念が大事」と言われると、いかに「経営者の」思いや素晴らしい理念を掘り下げて言語化するか、とか、「経営理念を掲げること」そのものにフォーカスしたくなります。
これまでの経験や自分の価値観の振り返り、しっかり概念に昇華する。今後の展望や希望、組織に期待することも考える。
ステキでカッコイイ、ワンピースで言うなら「海賊王に、おれはなる!」みたいな経営者の想いをしっかりと文字にしなくては…。
そして、「それを浸透させること」も、大事だと言われて久しいと思います。
いわゆる有名大企業(ビジョナリー・カンパニー)の例を挙げ、例えばスターバックス、例えばグーグル、例えばパナソニック、、、それが「各社員の判断基準になる」ことで、社員たちの自由な発想による様々なイノベーションが起き、業績も上がる…。
っていう、理想は分かるわけです。
だけど、
「目の前の仕事に忙殺されて、業績が上がるかどうかもわからない抽象的な『理念の言語化』なんかやってられない。ていうか俺がルールだ」
「理念の共有とか研修とか、社員の為を思って何度かやってるけど結局ダメ、無駄なコスト」
「それは社員のレベルが低いからだし、結局自分がやるしかない」
「はあ、デキる中途社員が低い給料で入ってきてくれないかな」
と思っている中小企業の経営者は、けっこうたくさんいると思ってます。
でも岩崎さんは、「17時に帰れるようにするよりも、まずはこれを優先するべきだった」とまで言っています。
これをどこまで無視できるでしょうか。
さらにこの本で注目すべきは、「経営理念を浸透させるために頑張りました」という内容ではなく、
「経営層と社員が分断されていた」という状況を赤裸々に書いているところです。
ようは、
一人のビジネスパートナーとして、トップが価値観や理想を真摯に伝達し続け、社員は、それを理解し共感することで「チーム」をつくる、
ということが大切なのだと思うわけです。
(日本には「チームが足りない」とはよく言われる話ですね。)
岩崎さんには、「理念を強調することで、それに合わないからと社員が辞めてしまっても仕方ない」と、腹をくくって真摯に社員に伝えていく姿勢があります。
頑張って形にした「理念」は、自分にとっては「物凄く考えてようやく形になった、これしかない!という抽象的な言葉」です。
だけど、本書で言えば「挑戦」、のこの二文字だけをいきなり言い出したとしても、社員はあまり納得しないと思います。
「どうしてそう思うか?」「なぜその言葉なのか?」「どれだけそれを大事だと思っているか?」という、「本当に大事なビジネスパートナーにじっくり分かってもらうためにいろいろな言葉を尽くし続ける」ということだと思うのです。
それは、「社員をビジネスパートナーとして信頼する」からこそできること。
社員側は「信頼してくれている」「真摯に伝えてくれている」ことがわかります。
当然、「自分の考えとは違うので離脱します」という人もいると思いますが、それはむしろお互いにとってイイ事です。
理念にしっかり共感してくれる社員たちで運営をしていけるということ。
社員側も、しっかり示してくれたおかげで、違うから別の道を、と選ぶことができるようになる。
これが「会社の文化」にまでなってくれば、「ビジョナリー・カンパニー」に近づいているといえるのではないでしょうか。
おそらく岩崎さんはこの辺りを体当たりで取り組んでいったんでしょうね。
今、本当に社員が素敵な雰囲気になっているなら、素晴らしい成果なのではないでしょうか。
30分で読める「ベンチャー経営者の心得入門」ベスト書
おそらく、この本で岩崎さんが言っている大事な事というのは、どこかのビジネス指南書や分厚い経営学術書とかに、何度も何度も繰り返し書かれている内容だと思うのです。「差別化をして優位性を作る」
「アウトソースやシステム化はむしろコストカット」
「効率よく働いてプレイベートも充実することで業績も上がる」
「経営者は素直な心で」
「部下を信じて仕事を任せる」
「理念をちゃんと抽象化して掲げる」 etc
だけど、こんなに読みやすくそしてさくっと、実体験に基づく経験談を手に入れられる機会は少ないのでは?
とってもおすすめ!
















