アナは村娘だったほうが良かった説 [アナと雪の女王考察]

2019-09-25考察, 洋画

英語の勉強で、ミュージカル風の曲をリピートするのっていいな、と思っていたところ思い出したのが「アナ雪」だったということで、ようやく観ました。

前半、ちょっと厳しいこと書いてますが、後半で褒めてます笑



アナは村娘だったほうが良かった説

氷を操れる姉が家出して、妹が「なんとかして」って訪ねてくる、ってところは例の「Let it Go」で知ってました。
それと「ディズニーは時代感に合わせてヒロインたちを作る」とか「今回は王子様的な人はいるけど王子様ではない」みたいな話もなんとなく聞いていたので、なるほどと。

明るい女の子が困難を前にしても力強く進んでいくその姿と、男女の恋愛だけでなく姉妹愛(人類愛)が世界を救うんだ、という「王子様のキスを待ってるだけじゃない女の子像」というのをこういうふうに描いたのねと。うまくまとめてしまうところが流石ディズニー。

でも正直「ラプンツェル」に感じたのと同じような展開の速さというか、いきあたりばったり感を感じました。
アナの行動、ちょっと何も考えてなさすぎじゃない?

「お姉ちゃんが出ていったのは私の結婚に怒ったから」とかいう頓珍漢なこと言ったり、お姉ちゃんが魔法を使える!?というとんでもない事実を目の前に、どうして逃げたのかを勘違いしたまま、なぜ「お姉ちゃんならなんとかできる」と思ったのか…。信じるところはそこじゃないのでは?
そのまま自国の部下じゃなくて他国の知り合って数日の王子にサクッと国を任せちゃうとかびっくり。
このへん、私のほうがなにか見逃してたか勘違いしてるのかなぁ。

これ、例えば「アナは秘密を守るために、記憶を消された後は町娘として村の商人に育てられた」とかだったら解るんですよね。

アナが成人するときか、エルサが王女になったときに打ち明ける予定だった、みたいなことにしといて。
(若干白雪姫感がありますけど…)

実はアナが王女だと知っていたハンスが近づいてきて結婚の約束して、手袋を外して周りを凍らせてしまったことで城を飛び出したエルサを見て何かを思い出した気がして、「お義母さん、お義父さん、よく分からないけど、私だったらなんとかできるような気がするの!なぜか分からないけど、エルサ王女に会いに行かなくちゃいけない気がするの!」とかいって駆け出す…なら解るんですよね…。

アナは、行き倒れた両親から預けられたと言われて育ったけど、どこかそれとは違う孤独感を拭えなくていつも寂しくて、城から出てこない王女であるエルサを見たこともないのになぜか強く惹かれたり同じものを抱えているんじゃないかと思ったりしていて…。
戴冠式の日に駆け出すエルサを見て「理由はわからないけど、どうしても私が行かなくちゃ行けない気がする!」と思った…。
ハンスはまあ、慌てふためく王女の家臣にうまく取り入る描写、とかで良かったんじゃないのかな。。

じゃないと勘違いしたまま無計画に飛び出して、できないって言ってる姉に「I know you can!!!」って遮るアナって意志の強い明るい女の子っていうか、アホの子じゃない…?

せめて、優しかった姉が制御できない魔法に苦しんでいる(いた)のかもしれない、ということに気付き案じる描写があれば。
アナはちょっと破天荒だけど大事な優しさ(強さ)はちゃんと持ってる女の子だ、って分かったんじゃないかな。

…まあ、これは私が大人だから違和感に感じるだけなのかもしれないですね。。w


そういえば、ハンスとの婚約はあまり違和感はなかったです。

展開の速さに「おいおい」感はもちろんあったけど、ミュージカルって出会っていきなり大恋愛に落ちたりするもんだし、今回は「孤独だったアナがそれを分かち合える人と出会った」という描写として全く違和感なかったんですよね。まだ18歳だし。あるでしょ。そういうのは。だから「Crazy」と言っているのはあまり深い意味無いと思ってたんだよね。

なので二人が恋に落ちる描写を描いた「Love Is an Open Door」は結構好きです。
クリストフと二人で掛け合う恋愛曲は実は一曲もなくて、ハンスとはあるってのも皮肉(?)だよねぇ。

惹かれるところがあって電撃的に恋に落ちるのってフィクションだからこそ綺麗に成り立つ面もあるのに、その後で、クリストフが「初めて会ったその日に婚約したのか!? ありえないだろ!」みたいなことを言っていて、なんかファンタジー観てるつもりだったのにいきなり現実的な気分になったわ…くらいの気持ちだった。w


最初の2曲の力+例の3曲

と、色々書きましたが、以下、さすがだなって話を。
主に曲についてです。

改めてサントラをリピートしまくって歌詞を追っている中で、この作品に深みを出してるのって最初の2曲なんじゃないか?と。

観る前から「Let it Go」や「For the First Time in Forever」をなんとなく知ってたから、そっちにどうしても意識が行ってしまったのだけど、最初の2曲。

Frozen Heart(氷の心)」と「Do You Want to Build a Snowman?(雪だるまつくろう)

Frozen Heart

最初のFrozen Heartは氷の神秘的な力を象徴してて、ちょっと民族風の曲調も凄く良い。
これぞファンタジー!っていう演出。こういうファンタジー演出が少なかった分、聞き返すとこれがとてもいい。
氷と雪山とともに生きる少年、っていうのもまた凄くいい。
氷と雪の神秘さや力をよく分かっていて、この人がきっとキーマンになるんだろうっていう予感。

結局、クリストフはいい男なんだけど現実的すぎて、そして(アナにとって)都合が良い男過ぎて、あんまり神秘的な感じがしなかったわけなんだが、でもこの男が居なかったらアナはマジでただのアホの子で終わってたから…ほんともうちょっとカッコつけさせてあげてほしかった。笑
アナと一曲も歌ってないからさらに現実的な感じが増している笑


Do You Want to Build a Snowman?

これも劇中で「さすがやな」って思って観てた。

小さいアナがエルサの部屋の扉の前で「前は仲良くしてたのにどうして出てこないの?雪だるまつくろう?」って無邪気に言うの、ほんと可哀想だったし可愛かった…。
日々が過ぎても「雪だるまつくろう」に答えてくれるエルサは居ない。
そして両親がなくなって二人きりになっても…。

両親が亡くなった後にアナが「雪だるまつくろう…?」って最後に言葉を一回しか言わないのも凄く切ない。
このピアノの演出、めっちゃニクイです。

これ大人が観ると、「アナのためにも苦しいけれど隠している」っていうエルサ側に感情移入しやすい気がするんですよね。
だからこそ、アナの無邪気な悲しみが逆に悲しいっていう。。。

そしてここで何度も歌った「Snowman」がこのあとで生命を持って具現化するっていうのも、「二人の想いが形になった」的な感じがしてよいです。(ただ、私はオラフについては一言あるが…。)


この2曲で、「この作品は氷の力がキーとなるファンタジーなんだ」ということと「姉妹の絆と孤独」をしっかり描いていたわけですね。


ではついでに、他の曲について。

For the First Time in Forever

初見時は日本語で聴いたからか、「いきなりノリノリな感じだな」と少々違和感を感じました。
でもちゃんと英語の歌詞を見ると「閉ざされていた世界が開かれる喜び」という歌詞になっているので、ノリノリな中にも「アナは孤独を抱えていたのだな」と改めて分かるようになってる。(邦訳は少ない音節で表現しきれなかったところがあるわけですね)
Let it Goと並んで「カラオケで歌ったら絶対気持ちいい曲」だと思うので、諳んじて歌いに行きます笑

Love is an Open Door

この曲も明るい曲ですが、この曲も「アナも本当に孤独だった」ということが改めて分かる歌詞になってます。
ここはハンスと孤独を共有する掛け合いがあるから、初見時も分かりやすかった。

それにこの曲、最後ハンスが裏切ったから微妙なポジションになってしまっているけど、本当は結婚式で流してもいいくらいの素敵な歌じゃない?
ハンスが最初っから嘘ついていたのだとしても、たぶん、アナが本当に幸せを感じたのは嘘じゃないと思うんですよね。
劇中でキャラクタ2人がちゃんと噛み合って掛け合って歌っている曲ってこれしかないしね。
そういう意味で言えば、ミュージカル曲的にはこの曲と「Fixer Upper」しかポジティブなのってないんじゃないか…?

Let it Go

この曲、当時Twitterで「ヲタクの姉が開き直る曲であって、自分を受け入れて自由になろう、というキラキラした曲ではない」みたいなツイートがバズっていたせいかナナメに見てしまっていたのですが、実際劇中で見てみると全然そんなことないよね…。

ある意味どちらも違うのでは。

エルサはこの曲を歌っていた時はまだ心から自由を感じたわけではないだろうから、確かに「開き直る」という表現は言いえて妙ではある。

でも「開き直る」って自分だけの視点というか…。自分一人の問題に対して「もういいや☆」って自己完結したわけではないよね、きっとエルサは。

「もうこれしかみんなが平穏に暮らせる道はない」と悟って、「本当は嫌だけど」、みんなのためにも私はこの自由(本当は孤独だけど)を選ぶの。っていう意味での「Let it Go」。

「For the First Time in Forever」や「Love is an Open Door」で希望や愛を歌いつつ実はアナの孤独が浮き彫りになったのと同じように、「Let it Go」では「ありのままでいいのよ」って叫びながら、本当は選びたくなかった孤独を選んでいるエルサの悲しみが表現されているってことなのではないかな。
だから実はかなり悲しい歌よね。

ライオンキングの「シャドウランド」にちょっと似てない?



オラフについて

オラフについては、うーん、と思ったところがありました。

「Snowman」の具現化というのと、その二人の想いが最終的にアナ(とエルサ)を助けるきっかけにもなった、という演出はさすがだなと思うのですが、このキャラ付け、「ファンタスティック・ビースト」の映画第一作で私が「コワルスキーとゴールドスタインに甘えすぎた」と書いたのと似たようなものを感じました。

ファンタビで私が書いていたのを再度引用してみる。

「ノー・マジ」としての立場、そしてちょっとおどけたピエロ役をすべてコワルスキーがやってくれて、真面目すぎて華も色気もない主人公二人に代わり、色気と華と、大事なストーリーの接続をやってくれたゴールドスタイン。
この二人、ほとんどメインストーリーには関係ないんですよねぇ。
でも、この二人がいなくなった途端、すごく地味でつまらない作品になってしまう。
なんだか「ちょっと味気ないからこういうキャラを用意しよう」と、後付で作られたキャラ・・・に見えるのです。

そう、、、
世間ではオラフは大人気らしいのですが、私は初見時「アッ…道化キャラを全部担ってくれる制作側のご都合キャラか…」というなんとも言えない気持ちに。。いや可愛いんだけどさ。

まあある意味、発狂した女王ちゃん、どっかズレてる明るい王女ちゃん、現実的すぎるお兄ちゃん、イッちゃってる王子くん、という、もう収集つかないメインキャラしかいなかったから、道化に見せかけて一番マトモなこと言うてるのが雪だるまっていうね…笑

ファンタビと違って彼が居ないとマジでストーリーが接続しなかった可能性があるから、大事な役どころだったんやな。うん。

(ファンタビについては原作を読んでなくて、あくまで映画を一回観ただけの感想ですのであしからず。)



というわけで、ちょうど観終わって直後に「FROZEN2」が解禁になったのですよ。

こちらはリアルタイムで劇場に観に行こうかなと思っております!