グレートギャツビー The Great Gatsby(2013)

2021-08-30洋画レオナルド・ディカプリオ

レオナルド・ディカプリオ主演、2013年版の映画です。
レオ様好きなのと、名作なのでいつか観ようと思ってた作品。


Greatな演出が逸品

原作は、1925年のスコット・フィッツジェラルド氏の「The Great Gatsby」という小説。

あらすじは、主人公であるギャツビーという男について、「信頼できない語り手」とカテゴリされるらしい、ちょっと気の弱い男ニックが語る、という内容。

「信頼できない語り手」とは、主に語り手が一人称であるが、その語り手自身の精神が不安定だったり、記憶が曖昧だったり、強い偏見があるなどということが読者に分かるようになっており(もしくは終盤で種明かしがあるなど)、読者は「どこまで事実なのか?」と不安になったりミスリードされたりする、という手法の一つらしい。

この映画ではさほど「信頼できない」感は強くなかったけど、確かに、ずっとニックが思い出を語るという形の演出なので「誇張入ってない?」「ニックが記憶盛ってない?」と思わなくもなかったです。
ただその誇張(ギャツビーの人生が劇的であるということ)こそが本作の面白いところなのでフィクションとして当然というか、あまり違和感はなかったかな。
もしかしたら原作(文章)で読むと印象が違うのかも。


さて、舞台は1922年のアメリカ、ニューヨーク。
1920年代のアメリカ、第一次世界大戦が終わった後のバブル、「狂騒の20年代」ジャズエイジ。
1929年の大暴落と世界恐慌までの夢のような10年間。
その真っ只中を生きた主人公たちの栄枯盛衰(というか人間の本性)を、真っ只中を生きている著者がぶっ放すという名作。

貧しい生まれの主人公(のちにギャツビーと名乗る)は若いときに商機を見出し、その後「狂騒の20年代」の盛り上がりに乗ってのし上がっていくが、かつて愛し合った奔放で美しい女性(デイジー)を忘れられない。その女性というのが「信頼できない語り手」ニックのいとこだったためにギャツビーは彼に近づき、ニックも強烈な構成を持つギャツビーに惹かれる面があり友人となる。しかし、デイジーはギャツビーが戦争に行っている間に別の金持ちと結婚していた…。

映画ではモノローグが少ないのと、原作では描かれているシーン(ニックとベイカーがいい感じになるシーンやラストでギャツビーの父親が現れるシーンなど)が省かれているらしいのですが、「ギャツビーの強烈な個性や生き様」と、「人間たちの本性」はしっかり描かれていると感じます。

まさに狂騒な感じをド派手に描き、そして、けれどその狂騒に湧いているのはかつて兵士として生死をさまよい生き抜いてきた人たちでもある…というコントラストがグッとくる。

レオ様のための映画

原作は小説ですが、この映画は2013年のハリウッド映画。
鬼才や天才を演らせたら右に出る者はいない(と私は思っている)レオナルド・ディカプリオが主演。

この時レオ様はそこそこの年齢(37歳くらい)で、ちょうど若人もできるしメイクすれば爺さんも出来るという、最も油の乗ってる時期。
やっぱりおっさん臭は出てきてしまっているけど、むしろ重厚感という感じ。

強烈な個性を持った鬼才で、だからこそ極端に脆い一面もある、みたいな二面性のある天才キャラ、本当にレオ様って感じ…。

ギャツビーがデイジーと再会するシーン、悶ました…。

「気質じゃない」ギャツビー

アメリカでは1920年から1933年にかけて禁酒法というのがあって、ギャツビーが儲けたのはこれ。
つまり密輸して密売して大金を儲けてた。もちろん、陸軍将校時代の恩恵もあるようだけれど。

当時アメリカでビールを販売しているのは主にドイツ系メーカーだったらしく、大戦の影響もあっての禁酒法施行だったとのこと。(ちなみにギャツビーもドイツ系アメリカ人という設定)

ギャツビーは冒頭から「気質じゃない」感じムンムンで描かれていて、後半、「ほらみろ!やっぱり犯罪者じゃないか!」とデイジーの旦那に責められるシーンがあり、ギャツビーは図星だからかそれにブチ切れます。

確かにその当時のアメリカで酒を売るのは違法なのだから犯罪に間違いなく、でも裏道はいくらでもあるし、隣の国では普通に売ってるし、…というか酒くらいいいんじゃないか…と考えると「ギャツビー、極悪人という感じではない」感がある。
麻薬はダメ、酒はほどほどならOK、という教育と価値観で生きてきてるからそう思うだけなんだろうけど…。

それに、警察を買収していると思われる描写があるんだけど、カネで警察や市政を買収する(ソデの下)、なんてことは、今も昔も古今東西残念ながら当たり前に起こっていることだと思うので、人の道を外れた極悪人!!という感じも、まああんまりない。

もちろん個人的な価値観で言えば金で権力を買収って完全にFuckなんだけど、時代背景的にそういう生き方になってしまった人というのはめちゃくちゃたくさんいて、そしてある意味、環境に影響されてそうやってのし上がってきた素直で正直な鬼才たちは、フラフラ主義主張を変えて嘘つきながら「それっぽく」振る舞って美味しいとこだけ持っていく矜持もなにもない人たちよりも長生きできなかったりして・・・。ちょっと悲しいよねと。

「憎めない裏社会での鬼才が、最後は華麗に破滅する」という名作は多いと思うのだけど、この作品も、人間やその時代のキラキラした面とドロドロした面をコミカルシリアスに描いていて本当に素晴らしいです。


善悪モノではないので「正義とは?悪とは?」という強烈なメッセージがあるわけではないけど、「人間とは…(´・ω・`)」という気持ちにさせられる名作です。