横山 信弘 / 絶対達成マインドの作り方

2023-11-07クイック本(さくっと読める), interest 好奇心, IT, manage-strat 経営・戦略・思考, self-dev 自己啓発/リーダーシップ

10年前に二度ほど読み、多いに背中を押された本。
このほど再読し、また大いに学びがありましたので気づきをまとめておきます。

あくまで私の解釈ですのでご容赦を。


自信をつけるのに、「モチベーション」は100%必要ない

冒頭、まず「意気込み」「やる気」「気合」などの精神論、根性論とは全く違う、「やりたいことを達成してしまう」マインドがある、とぶち上げ。

仕事や物事が上手く始められない時、続かない時、成果を出せない時、その原因は「モチベーションが下がっていることが原因だ」と考える人が多い。
そしてその状態が続くと、「この仕事に意味なんてあるのか」「そもそも自分はこの仕事を本当にやりたいのだろうか」とか自分探しさえ始まってしまう。

仕事に精を出すことができないときがあり、そこには理由があるのだと思い込む。
それを探求していったら、どうやら「モチベーション」というものが深く関わってるらしいなどと、まじめすぎる人は考えてしまうのです。
本書では「まじめすぎる」と書かれているのですが、これは「問題が起きたら、その原因を追求してそれを取り除くべき」という発想なのだ思います。
普通の仕事であればトラブルが起きたらその原因をしっかり追求して解決し、さらに再発防止策を練らねばなりませんが、それを人間のマインドに当てはめてはいけないということなのでしょう。

そういえば、「なんだか今日はやる気がない、上手く行かない、と思っている人! それは低気圧のせいです! あなたに何か問題があってやる気が出ないわけではありません!」といったようなポストがバズったりしましたよね。
「やる気が出ない」などという気分というものは、自分自身にこれといった原因があるわけでもなく、案外意識してコントロールしたりもできないわけです。
そう、なので、「どうやったらやる気が出るか」だとかそんなことをウダウダ考えていても無駄なのです。

気分が乗らなくても、あまりまじめに考えることなく放置して、目の前の仕事をすればいいのです。そうすればわかります。モチベーションなどとは関係なく仕事をこなせるということを。

ちなみに本書では、「部下に仕事を命じるときには、その仕事の意味を説明して納得させなさい」論にも否定的です。
納得しようがしまいが、先にいう「現状維持バイアス」があれば人は動かないし、その意味合いについて考え出してしまったりすると余計にノイズになります。
個人的には、その仕事が会社にとってどういう戦略的位置づけにあるかくらいは話したほうがいいと思いますが、「意味のある仕事だから共感してやる気を出せ」というのは押し付けがましいというか、「共感できないから自分はこの仕事ができないんだ…」とまさに思い込ませてしまう悪手なのかもしれません。


さて、本書で何度も出てくる例えとして、「明日の朝10時に、初めてのお客様を訪問する」というミッションがあります。
そしてこれはほとんどの人が、遅刻せずにお客様のところに到着することができるはずです。
それはなぜか。やる気があるからじゃないですよね。遅刻しないことに深い意味を感じていつもそれを噛み締めているからじゃないですよね。

遅刻しないで客先に行く、そんなことはあたりまえだからです。

現状維持バイアスを外し、あたりまえ化する

現在自分の売上目標が8000万/年だとして、それもなかなか達成できなそうなのに、ある日来年は目標を1億にせよと言われたとする。

「は? 無理無理! 1億なんて無理に決まってるじゃん」と即座に思ってしまった人は、現状維持バイアスがかかっている人です。
言い方次第では、昨今はこれだけでもパワハラだ! ブラックだ! と炎上してしまうやも。。

しかし本書が言いたいのはそこではありません。
1億円を達成できなければ罵倒されるとかクビを切るとかそういう理不尽に耐えろとかいう話ではなく、「どうしたら1億円の売上を達成できるだろうか?」と、何回も真剣に考えたか、ということです。

絶対に1億円売り上げると決め(ロックする)、本当に1億円を売り上げるためにどんな方法があるかを真剣に考えて向き合えば、必然的に、調査したり勉強したり、人にアドバイスを乞うたり、なにより色々と動いてみることで事態は前進するのです。

そしてこのプロセスを「あたりまえ」にしていけば、「時間が未来から流れてくる」という感覚になり、目標を絶対達成できるようになっていきます。

大事なのは、インパクト×回数で現状維持バイアスを外し、目標達成はあたりまえという体質を作っていくこと。


そのためには、「目標をロック(絶対達成すると決める)」し、現状維持バイアスを外し、自分とペーシングしながら頑張る。
でも、「とてもストレスのかかる『頑張る状態』は長くても8ヶ月」と言い切ってくれる優しさ。

その方法論の部分を、私なりにまとめてみました。

思考のあたりまえ化の4ステップ

【全体像】


ペーシング → ラポール → リーディング

まずはピンクの部分。

簡単に言えば、ペースを合わせないと信頼ができないので、何事も進みませんよと。

周りのペースに合わせる、という以前に、まず自分自身のペースに合わせなきゃいけない。
この「ラポール」の流れは、心理学界隈にて相手に信頼してもらいアドバイスを受け入れてもらいやすくするという時に使われる概念だそうですが、直感的にも理解しやすいですね。営業のテクニック(概念)としてもよく紹介されているようです。

ここで大事なのは「自分とのラポールを形成する必要がある」ということ。
周りの状況やペースを無視して「あれやって!これやって!」とお願いしても周りが動くわけない、それと全く同じで、自分にだってペースやタイミングというものはある。
それを無視して始めても辛くて続かないし、また意味のないそもそも論や自分探しをしたりして(これを『思考ノイズ』という)、結局進まない。

だからまずはペーシングしましょう、というのが図の②「わかっちゃいるけど」期間です。
そして③「葛藤のシーズン」を頑張れば、④「あたりまえ状態」となり、そのころには自分自身とのラポール(信頼・自信)が形成されてきています。
そうすればもう、「絶対達成」するように自分をリーディングできる。

②わかっちゃいるけど期間

これはペーシングの期間であり、「知っているのに・意識しているのに・できない」状態のこと。
知っているしやりたいと思っているんだけど、でもまだ実行できない。

はたから見れば「何を迷ってるの? さっさとやればいいじゃん。」という状態なのかもしれないけど、それでも、どういわれようと、なんだか気分が乗らない。

でもこういうことは誰にでもあるものであって、そこに大した理由や根本的な原因などないらしい。
何か条件がそろえばスタートできるようになると思い込んでいる人がいますが、そうではありません。
なんとなく、気分が乗らないだけなのです。
ですから待ちましょう。自分を信じて待つのです。

これは「長くてもXXヶ月」といった記載はありませんでした。
しかし、自分がいま、この②「わかっちゃいるけど状態」なのか、③「頑張る状態」なのかは意外と見分けがつきづらい。
そう、おそらく②の状態から③の状態にある日突然突入する(そしてそれに自覚的である)わけではなく、自分を鼓舞してやってみるけど、辛くて続かないなら②(に戻る)、そのまま頑張れそうなら③という「行ったり来たり状態」に近い、グラデーションのある境目なのです。

なので、この「わかっちゃいるけど」期間は、「やる気が出るまでずーっと待てばいいや~」という「何もせずに待つ」状態というわけでは全くないはずです。

「やろうよ」「やろう」「そろそろ動き出そう」「さーて、来週からは行動をロックしようか」と、何度も何度も意識する。
弱いインパクトでいいから、回数を重ねる。 そこで「こんなに意識しているのに、まだ動き出せない自分」を責めたり、そこに原因追及をしたりすることなく、「まだできない状態なんだな」と自己承認しつつも意識し続ける、というのが「自分を信じて待つ」ということなのでしょう。

この意識するインパクトと次のインパクトの間が長すぎると効果は無くなる、つまり年明けに「よーしやるぞ」と決意したけどやらないままで、気づいたら4月でした、みたいなのはあんまり意味がない。
なのでおそらく、少なくとも隔週とか、あるいはできれば週1、過度なストレスにならないなら毎日、意識したほうがよいのだと思います。

余談ですが、私は毎日使うTodoリストに「まだ手を付けられないけどやりたいこと」を入れており、これは毎日目に入るので常に「近日やるんだ」と感じるのですが、「この項目はもうやらなくてもいいな」と断捨離してリストから削除した途端に脳内から消え去り、それを自覚して自分に驚いたことがあります。
「自分がやる予定のこと」を何度も何度も目にしていれば「これを実行している近未来の自分がいる」というイメージが強固になっていって、実際に着手した時には何の違和感もなかったりすることもある。

ともかく「果報は寝て待て」みたいな話ではなく、「スタートラインに何度も立ってみる(ただし走れないと思うなら棄権しても誰も咎めない)」ということなのではないでしょうか。

③がんばる期間

さて、スタートを切れたかな、このまま頑張れそうだと気付いたら、8ヶ月くらいはわき目も降らずに頑張ってみろ期間『葛藤のシーズン』。

この期間は車の運転で言えば、教習所で教員とともに運転するときのような、「意識していれば・頑張れば・何とかギリギリできる」という状態。
気を抜いたりしたら手元が狂って事故る可能性すらある、ストレスフルな期間。

大変だから小休止しよう…としてはいけない。
「あたりまえ」状態が「高速」なのだとしたら、高速に乗るためにアクセルを踏んでいる状態なので、そこで減速したりアクセルを踏むのをやめてはいけない。

そしてここで大事なのは、この頑張る期間には必ず潜在問題にぶつかるので、PDCAを回すことになる、ということ。

行動をロックしてやってみると、やる前までは見えなかった「潜在問題」に必ず遭遇します。
で、そこですぐに嫌になってやめてしまわないで、すぐにそれを言い訳にしてやめてしまわないで、それに向き合って乗り越え続けるんだということです。
「遭遇した問題を解決しようとしないまま8ヶ月間何も考えず耐え忍べ」ということではないわけです。

運転がうまくいかないのに、「じゃあ次はもっとここをこう気を付けてやってみよう」とトライ&エラーしないまま壁に激突を繰り返して「辛いけど8ヶ月我慢」していても、絶対上達しません。

ここで先ほどの「何回も真剣に考える」が登場。

潜在問題

さて、突然「見飽きたフレームワーク」であるPDCAが登場。


なんだよ結局PDCAしましょうねっていうよくある話なの…? はい。

でもこれは高速で回っているんですよ。
どこかのお堅い企業が何か月という単位で目標を立てて、「さあ、実績をまとめて提出しなさい」「来月、部長を集めて来期のアクションを決めます」みたいな話ではありません。

結果は数か月後にしかわかりません、ということはおそらくなく、最終的な結果はもちろんまだ出てないけど、このままいけば明らかにこの目標は達成できないよね(つまり現時点で受け取っている結果がもう全然ダメ)、くらいのことはすぐにわかるわけです。

となれば、「じゃあどうすれば達成できるのか」をまた考える。
とてもヘビーだが、これを繰り返せということなのですね。

②の期間は「意識のインパクト×回数」でしたが、③は「行動のインパクト×回数」、質よりも量です。

その前に、「行動の潜在問題」がある

そう、世のPDAC解説にはおそらく出てこないであろう、「行動の潜在問題」。

行動をロックすると、「結果の問題」以前に「行動に関する問題」にまず遭遇します。

私はこの「この作業を想定通り実行すればこういう結果が出るはずだ」という話と、「そもそもその作業が想定通り実行できない」という問題は同じレイヤーで語られることがほとんどない・もしくはごちゃまぜにされており適切に分類されていないと考えているのですが、本来これは切っても切り離せないけど、別のレイヤーでとらえる必要があるという内容なのですね。

一番ありがちなのが、「さあやるぞ!」と例えば「毎晩走って(行動目標)5キロ痩せる(結果目標)!」とロックしてみたものの、二日目に想定外の夜勤が入ってしまって走れないとか、三日目には季節外れの雪が降り靴がなくて走れないとか、「そもそも毎晩走るという行動自体ができない」という話。

この時、「あーやっぱ自分は何をやっても続けられない、三日坊主だ」と諦めてしまうのではなく、「やっぱり行動の潜在問題が出たな! ではどうすれば実行可能だろうか?」と考える
たとえば「では週に2回走って、3キロ痩せるという目標にしよう」とPLANしなおして行動してみる。

そして週に2回ちゃんと走ったうえで(行動をやりきっても)、目標期間を過ぎても痩せていない(結果が出ていない)としたら、今度は「どうすれば結果が出せるだろうか?」とさらに考える

これが大変なのです。簡単じゃないのです、辛いのです。

しかし、私は図で「ENCOUNT」と書きました。
これは本書内では一切出てこない表現であり私が勝手にそう書いただけなのですが、潜在問題とはつまり「ゴールするためには出会わなければならないモンスターn天王」たちであって、出会わなければ永遠にゴールできないわけですから、出会ったらむしろ「やったぜ!これで一歩先に進めた!」と喜ぶべきものなんじゃないのか?

もちろん、モンスターを倒す…じゃあ次はどうする、というアイディアを考える、というのが一番ヘビーなところなんだけど、レア武器をドロップする強めのレアモンスターにエンカウントしちゃった時って、ヤベー!と思いながらも「絶対勝ってやるぜ!出るってのは知ってたしな!」と、頭フル回転でバトルに挑むと思うんですよ。(唐突にゲームの例えですみません…)
それくらいの「どこかで絶対出る」という事前の理解と心構えと、「やってやるぜ」くらいの心意気はあってもいいのかも、という思いを込めて「Check」ではなく「ENCOUNT」としてみました。


倍速管理

さて、ほかにも出てきたテクニックの一つとして「倍速管理」があります。

誰かから何かを依頼されたらまずは内容を言い換えて復唱(1回目のチェック)したうえで期限を確認、そしてその期限の1/2のタイミングで提出しろ(2回目のチェック)というテクニック。
若干若者向けのテクに聞こえますが、普遍テクではあるし、「PDCAをすばやく回す」の「素早く」の部分を体に馴染ませるにはとてもいいアイディアなのでは。

仕事を頼むほうが、あんまり細かく考えずにふわっとしたイメージで仕事を振る場合もよくある。
なので依頼された瞬間にまずは、その時点で想定でいる具体的な案や作業イメージを伝え、その理解であっているかを確認。ここでいきなり「そういうのじゃないな、もっとこう」となれば、間違った作業をする無駄な時間を一気にカットできます。

そして期限を確認。
これもね、案外、仕事を依頼する側は全体のエンドだけは頭にあるんだけど、個別作業のリミットがいつか、なんてあんまり考えてないんですよ。
ガッチガチに指示するような部下や仕事でもないからそこを考えるのも含めて依頼してる、というパターンは中堅以降は増えてくると思いますが、とはいえ、その人がどこをマイルストーンとして想像しているのかを確認するのはとっても大切です。

そしてその期限を約束したら、その半分のタイミングでもう出す! 中途半端でもいいからとにかく出す。
これをIT業界では「WIP」と言ったりするんですが、これをすることで「そうじゃなくてさ…」という誤解が解けるタイミングも半分になり修正する時間もできるし、なによりその素早い動きを見て、仕事を依頼した側は期限を指示した経緯があるから余計に「こいつは仕事が早いな」と信頼感が高まっていくわけです。

期限を約束してない場合だと、相手は「いつまでに依頼した」という自覚がないので早く持って行ってもインパクトは薄めです。
でも「いついつまでですね」とちゃんと期限を約束していると、「それよりもだいぶ早いぞ」と感じてくれるわけです。

若干マッチポンプ臭がなくはないのですが、セコいどころかWin-Winの有用テクなんですよね。

余談

横山さんのこの話、アジャイルですよね…。
IT界隈では、しっかり計画をたてて計画通りに進めるクラシカルな「ウォーターフォール」開発と、数週間ごとに作りながらより良いものに作り替えていくというここ20年くらいのトレンド「アジャイル」開発がよく対比されます。

アジャイル開発は、だいだい製作期間を2週間くらいと決めてそこで何を作るかをロックして、作って、そこで作ったプロダクトは「レビュー」、そしてそれを作ったチームは「振り返り」、そしてまた次の2週間へ、という繰り返しのサイクルで実行することが多いです。
つまりレビューで「結果の潜在問題」を、そして振り返りで「行動の潜在問題」を、明らかにして次の計画に反映させようというサイクルで動くのです。

そして「すばやくサイクルを回す」という点からも、これはほぼアジャイルだなと思いましたね。


本書は「自分自身を」絶対達成マインドにする、という一人視点で執筆されていますが、アジャイルはこれを数名のチームで行う感じ。
どちらも簡単ではないのですが、アジャイルチームがどうも士気が低いな…パフォーマンス微妙だな…とかお思いの方がいたら、この横山さんのメソッドを学んでみるというのはとてもいいヒントになるのではと感じました。
アジャイルチームの全員がもしも「絶対達成マインド」の人間だったら、やべーパフォーマンスのとんでもねーチームができると思います。



というわけで、私なりのまとめでした。

だいぶ言い回しを自己解釈して書いているので、この記事はご参考程度に。
本書は色々シリーズも出ているようですのでそちらもどうぞ。
私も気になるので、折を見てチェックしてみようと思います。